低温を綴じて、なおさないで
……キス、くらいなら、と。これはわたしの弱さだ。柔らかい甘さを受け入れるしかないとこわばらせたとき、不意に静寂をつんざくような通知という名の落雷、わたしたちの間。
紛れもなくわたしのもので、その音が壁となったみたいに、わたしから葉月くんが離れる。「見ていいよ」と許可を得てひらけば、それは珍しくわたしの脳内に現れなかったそのひとからのものだった。
『明日、22時』
「……っ」
どうしたって、直に、引き戻されるのかもしれない。
直と結ばれる運命がなくとも、それがわたしの運命なのかもしれない。
キスくらいなら、なんて軽く考えたわたしへの警鐘だ。唇も身体も心だって、すきじゃないひと、付き合っていないひとには許したくないのに。
「緊急の用?」
「ううん、そんなことないから大丈夫」
「……そっか。じゃあ一旦家方面戻って散歩しながらお酒でも飲もうか」
ぐっと伸びをするように立ち上がった葉月くんにつられてわたしも同じように腰を上げた。駐車場まで歩く道、さりげなく手を差し出されたけれど、くらさを言い訳に見えていないふりをして取らなかった。
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