低温を綴じて、なおさないで
「……友達と、約束があるから。だけど栞ちゃんは俺にとって特別な子」
綺麗にかわされて、特別、なんて言葉を落とす。繋がれた手によりいっそう力がこもって、優しさのなかに艶を含んだ笑みが向けられる。
……もうたぶん、終わりだ。葉月くんとわたしに未来はない。あいまいにすら、描けない。
一緒にいて楽しいけれど、はじまりもおわりもない名前のつかない関係は、無意味だ。
付き合っていない、付き合おうとしないのに、特別だなんて、そんな都合の良いことほかにない。
だから直感的に、これは良くない始まりの合図だと気がついた。葉月くんの頭が肩に乗って、もう一方の手がわたしの太ももを撫でた。耳元に髪が揺れて、すこしだけ身をよじった。