低温を綴じて、なおさないで
「栞ちゃん、甘くていい匂い」
やばい、と危険を感じたときにはもう遅くて、わたしの首筋に葉月くんの顔が埋まっていた。
すぐに届いたぬるくてざらつく甘い感触に、今度こそ危険センサーがわたしの中を駆け巡った。首筋を這う舌が、跡がつかないくらいよわく、ちゅうっと音をたてる。
「ね、葉月く、だめ、待って、」
「いいじゃん、栞ちゃんも俺のこと嫌いじゃないでしょ?」
「だって、わたしたち、そういうんじゃない、」
「……そういうの、にしちゃえばいい」
首元で話されるせいで、いちいち吐息がかかってくすぐったい。意に反して、声が出てしまいそうになる。必死に唇を結ぶ、わたしの意地だ。
この空間は夜空にだけ、監視されている。逆に、星にも月にも、見られてしまっている。