恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
部長は全面的に俺たちを応援してくれているようだが、俺は微妙な笑みを返すことしかできなかった。
もちろん俺だって、できるものならそうしたい。しかし、神崎さんの方は強引に迫られることは望んでいないだろう。
それなら、衝動に任せて彼女に感情をぶつけ、後になって『ごめん』と謝るような真似はもうしたくないのだ。あの雷の夜のように。
停電で部屋が闇に包まれている間、安心して俺の胸に身を預けてくれた彼女の温もりや甘い香りが愛おしくて、明かりが点いて視線が絡んだ瞬間、その唇を奪いたい衝動を抑えられなかった。
神崎さんも抵抗しなかったし、唇を重ねている間は本当に幸せで、胸の中では何度も彼女に『好きだ』と伝えていた。
しかし、いざ唇を離して戸惑う彼女と目が合った時、俺は自分がしてしまったことの愚かさに気づく。
神崎さんは子どもの頃の体験がトラウマとなり、本気で雷が怖かったからこそ、俺を部屋に招き入れてくれたのだ。俺だってそれはわかっていたはずなのに。
『男を部屋に上げることに抵抗があるのはわかるけど、神崎さんを余計に怖がらせることはしないって約束する』
そう口にした自分がいかに無責任だったか痛感する。
神崎さんが実際に俺を怖がったかどうかの問題じゃない。あの状況で、彼女を安心させるよりも自分の欲求をぶつけるのを優先させてしまったことが、俺には許せなかった。