恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
まだ朝礼は続いていたが、呆気に取られて部長の声が遠ざかる。
このタイミングで発熱って……私に対する当てつけで仮病を使っているわけじゃないよね?
いや、いくら彼でもそこまでするはずがない。私や営業部のメンバーだけでなく、取引先にも迷惑がかかる恐れがあるもの。
急病は誰にだってあることだし、ここにいない彼の思惑を勝手に想像して気を揉んでも意味はない。
今日は彼を欠いた状態でやるしかないのだ。
朝礼が終わると、彼の他に四人いるチームメンバーにスケジュールを聞いて回る。
みんな気持ちだけは協力的だったけれど、午前中が丸々潰れる試飲会を手伝える余裕はなく、誰もつかまらない。
針ヶ谷さんが私に協力したくないがために仮病を使っているのだとしたら私との個人的な関係のせいだし、どうしてもと無理に頼み込むことはできなかった。
「ひとりで行くしかない、か……」
腹をくくり、クーラーボックスのベルトを肩にかける。500ミリリットルのボトルが十二本、つまり六キロ以上はあるワインの重さが一気にのしかかり、思わずよろめく。
駅から近いレストランのため移動は電車にするつもりだったが、こんなことなら社用車の使用届を出しておくんだった。
……いや、運転に自信のない私ひとりじゃむしろ危険か。