恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
「……すみませんでした」
「俺ってそんなに胡散臭い?」
ここで『そんなことないです』と言っても、あまり説得力はないだろう。真城さんの方も、先輩だからと気を使われるのはあまり好きじゃなさそうだし……今は素直になっておく方が正解みたいだ。
「……少し」
「どの辺が?」
「だって、息を吐くように優しい言葉が出て来るじゃないですか。あと、人を褒めるのもお上手だし、困っていたら絶対に助けてくれる」
言いながら、自分がなにを言っているのかわからなくなってきた。
今って、真城さんのいいところを発表する会だっけ?
「えーと。それってダメな要素ある?」
褒めちぎられている彼も、心底困ったように苦笑した。混乱した私は少しの間黙り込み、自分なりの答えを探す。
真城さんは、言ってしまえば完璧な男性だ。なのにどうして私はこうも苦手なんだろう。
お隣さんだから気まずい。エリート感が苦手。……という単純な理屈だけでもないような。
「……まぁでも、私生活では失敗も多いし、なにか欠陥があるんだろうな」
私が返事をする前に、真城さんがぽつりと呟いた。
前方を見据える彼の瞳に見たことのない憂いが滲んでいて、いつもと違う彼の様子にどきりとする。私生活の失敗って……恋愛とか?
「それって、この間マンションにいた女性が関係あります?」
「えっ? ああ、きみは彼女の姿を見ていたのか」
「はい。女性とすれ違った直後に真城さんと会ったので、あの人がお客さんだったのかなって。……彼女、泣いてましたよね?」