恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

「……すみませんでした」
「俺ってそんなに胡散臭い?」

 ここで『そんなことないです』と言っても、あまり説得力はないだろう。真城さんの方も、先輩だからと気を使われるのはあまり好きじゃなさそうだし……今は素直になっておく方が正解みたいだ。

「……少し」
「どの辺が?」
「だって、息を吐くように優しい言葉が出て来るじゃないですか。あと、人を褒めるのもお上手だし、困っていたら絶対に助けてくれる」

 言いながら、自分がなにを言っているのかわからなくなってきた。

 今って、真城さんのいいところを発表する会だっけ?

「えーと。それってダメな要素ある?」

 褒めちぎられている彼も、心底困ったように苦笑した。混乱した私は少しの間黙り込み、自分なりの答えを探す。

 真城さんは、言ってしまえば完璧な男性だ。なのにどうして私はこうも苦手なんだろう。

 お隣さんだから気まずい。エリート感が苦手。……という単純な理屈だけでもないような。

「……まぁでも、私生活では失敗も多いし、なにか欠陥があるんだろうな」

 私が返事をする前に、真城さんがぽつりと呟いた。

 前方を見据える彼の瞳に見たことのない憂いが滲んでいて、いつもと違う彼の様子にどきりとする。私生活の失敗って……恋愛とか?

「それって、この間マンションにいた女性が関係あります?」
「えっ? ああ、きみは彼女の姿を見ていたのか」
「はい。女性とすれ違った直後に真城さんと会ったので、あの人がお客さんだったのかなって。……彼女、泣いてましたよね?」

< 49 / 199 >

この作品をシェア

pagetop