恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる

 私が所属する営業部は国内担当と海外担当で部署が別れていて、世界の市場を相手に大きなお金を動かす海外営業部の方が花形とされている。

 当然優秀な社員が揃っており、私より二年先輩の真城昴矢(こうや)さんはその中でも出世街道まっしぐらと太鼓判を押されている人。数年前からはニューヨーク支社で、その営業手腕を発揮していたはずだ。

「忘れられてなくてよかった。先週帰国したばかりで、こうして引っ越しやら色んな手続きに追われているところなんだ。来週からまた本社に勤務する予定だよ」

 エリートの真城さんを社員の誰もが知っているのは当然だが、逆に彼が私の顔と名前を覚えていて、こんな風に声をかけてくれるのは意外だった。

 おそらく記憶力も頭の回転の速さも、常人とは違うのだろう。

「そうだったんですね。改めてよろしくお願いします」
「こちらこそ、向こうで経験してきたことを還元してみんなの役に立ちたいと思ってるからよろしく。しかし、まさか同じ会社の人がお隣さんだとは思わなかったな」

 真城さんがそう言って優しげに目もとを緩める。

 お隣さん……。声を掛けられた時からなんとなく察していたけれど、引っ越してきた隣人はやはり彼だったらしい。

 彼のことは尊敬しているし隣人で困るということはないけれど、こんなにも近所に同僚がいるのは少し気まずい。きっと彼の方も同じだよね。

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