恋より仕事と決めたのに、エリートなお隣さんが心の壁を越えてくる
一年のうち雷に遭遇する日は決して少なくないのに、いつまでも進歩のない自分が情けなくて、固く閉じたまぶたのふちにうっすらと涙が滲んだ。
「――神崎さん?」
その時ふいに、私を呼ぶ真城さんの声がした。
恐怖のあまり、とうとう幻聴が聞こえた……?
そう思いながらもゆっくり声のした方を見上げると、エントランスから出てきたのであろう真城さん本人が、目を丸くして私を見下ろしていた。
「真城……さん……」
彼は私の様子が普通でないことにすぐ気づいたらしく、同じ目線に屈みこんで私の顔を覗く。
「もしかして、また目眩? あまりひどいようなら救急車を呼ぼうか?」
「いえ……違うんです、私、あの……」
説明しようと言葉を探していたところで、また雷鳴が辺りに轟いた。
その瞬間ビクッと身を竦めて震え出した私に、真城さんがそっと尋ねる。
「もしかして、雷が苦手……?」
ここで頷いたら、子どもみたいだと思われるに違いない。
でも、今は強がる余裕がなかった。私は頼りない目で彼を見つめ、こくんと首を縦に振る。
「わかった。とりあえず、その荷物を俺に貸して。それで、きみは耳を塞いで……ゆくりでいいから立てる?」
真城さんが一つひとつ動作を指示し、支えるように私の肩に手を添えて、マンションの中に促してくれる。