孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
遥さんと本物の夫婦となってから、実家に揃って挨拶に行った。
三人とも突然の結婚報告に驚き、そして盛大に喜んでくれた。
奈子は私が初めて遥さんと会うことになった時、あの洋服を選んでいた時から怪しいと思っていたと得意げに言っていた。
あの時の私は、まさか遥さんとこんな風になるなんて思いもしない。可能性すら考えなかった。
「お祖母様、奈子ちゃん、蒼くん、今日はありがとうございます」
遥さんからも丁寧に挨拶され、三人はにこやかに応える。
大切な家族と、大好きな人と、新たな門出を迎えられたことがなにより幸せ。
目の前にある光景をしっかりと目に焼き付け、心のアルバムに仕舞っていく。
「お姉、お色直しは何回するの?」
女子高生の奈子は、結婚式に憧れもあるだろう。弾んだ声で訊いてくる。
「制服を入れたら、三回の予定だよ」
「制服⁉ あっ、仕事のか! てことは、お義兄さんもパイロットで登場されるってこと?」
羽田での挙式披露宴、そして私たちが航空関係の職業に就いているということもあり、披露宴ではサプライズ的にお色直しでお互い制服での入場も予定している。
「楽しみすぎる……! 蒼、ビデオとカメラチャンス、逃さないでよ」
「責任重大だな。俺の撮影にいっつも文句つけてくるんだから、苦情は聞かないぞ」
「ちゃんと撮ってればなんも言わないし!」
奈子と蒼が姉弟の言い争いを始めて、祖母が「ふたりとも」と仲裁に入る。
「そろそろ向こうで待とう。真白、遥さん、また式でね」
祖母に促され、ふたりも言い合いをやめて私と遥さんに「また後で」と立ち去っていく。挙式を楽しみにしていると言って三人は控え室をあとにした。