孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
春の明るい日差しが注ぐ、快晴の羽田空港。
天井まで届く大きな扉の前、遥さんの腕に掴まりその時を待つ。
「緊張してる?」
横から遥さんに顔を覗かれ、ぴくっと肩を揺らした。
この扉が開かれれば、向こうには私たちを祝福しに参列してくれている人たちが今か今かと入場を待っている。
いよいよかと思うと、自然と顔が強張っていたのかもしれない。
「してないつもりだったんですけど……そう見えますか?」
「少しだけ」
これから幸せいっぱいの挙式だというのに、緊張しずぎた硬い表情なんてしていたらダメだ。
深く息を吸って深呼吸すると、遥さんが横から私の頬をつまんだ。ふにふにと引っ張られて。思わず笑みが浮かぶ。
「もう、なんですか?」
「ん? 緊張をほぐしてやってるんだろ」
「遊んでるだけですよね?」
こんな砕けたやり取りをしている今、初めて話した頃が懐かしい。天下の高坂機長とどう接したらいいのか、話すだけでも緊張していた。
そんな時代を経て、今こうして笑い合って話せるようになった。
これからもずっと、共に人生を歩んでいけますように……。
チャペルの扉がゆっくりと開いていく。
祭壇の向こうには、飛び立っていく旅客機、帰ってきた旅客機。空の玄関口が広がる。
盛大な拍手に迎えられ、遥さんと共にゆっくりと一歩を踏み出した。抱えきれないほどの幸せを抱きしめていた。
* Fin *


