孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~
「デザートも美味い」
「本当ですか? それは良かったです」
所用を済ませて帰宅して、予告もなく食事の準備をしてくれていたことには意表を突かれた。
慣れない場所でひとり買い出しに行き料理を振る舞ってくれたことに、口に出した以上に内心喜んでいた。
まさか、引越し初日に彼女の手料理を食べられるとは思いもしなかったから。
料理はすべて美味しかったし、なによりその気持ちが嬉しかった。
「ぶどう、そのまま出すか、ゼリーにするか迷ったので、正解でした」
さっきの寝室問題の話題が気まずかったのだろう。デザートのゼリーは自分の分は出さず、キッチンに入って食器の片付けを始めている。
食器を洗いながら彼女は微笑む。
まだまだ余所行きな表情は、俺が心を許せない相手だから。
お互いに探り合いながら様子をみているこの感覚が、どこか新鮮でなんとも言えない緊張感に包まれている。
でも、関わるようになって自分の見る目は間違いなかったとも実感していた。
お互いに得のある関係になれたら悪くない。
この偽装結婚は、彼女にとっても俺にとっても明るい未来のために始めたのだ。