孤高なパイロットはウブな偽り妻を溺愛攻略中~ニセ婚夫婦!?~


「びっくりしましたね……」


 ふたりきりになると、つい本音が漏れる。

 まさかこんなところで桐生機長夫婦に会うとは思いもしなかった。


「こういうことも想定しておかないとな」


 遥さんは至って冷静で慌てもせず、私と一緒になったと紹介していた。

 私も自分の知り合いに会った場合など、さっきの遥さんみたいに自然な感じで紹介しなくてはいけないのだ。

 できるのか不安しかない。


「こうやって少しずつ知れていって周知されていくのも必要だからな。まぁ……桐生はそこまで拡散力はなさそうだけど」


 遥さんはそう言ってふっと笑う。

 桐生機長はクールな印象の人だから、うわさ話の好きな女子たちとは違うし、今日プライベートで会ったことを職場でべらべら喋ったりしないだろうと、そういう意味だろう。


「こうやって顔を合わせて話さなくても、見かけられている場合もあるだろうしな」

「そうですね……。そう考えると、外に出たら油断できない」

「ああ、でもそれでいい」


 遥さんは「これ、買ってくる」とひとりお会計へと向かっていった。

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