王子は愛しき姫の目覚めを待つ
 そしてこの日から、オフィスでは神田くんとの距離が近くなると、どこからともなく坂嶺くんが現れてそれとなく私から引き離すのがとても上手かった。
 まるでヒーローみたいで、何度でも惚れ直してしまう。
 それでいて最近は今まで手を抜いていたのかと思うほど周囲の期待以上に仕事をこなして、人当たりの良さもあり、彼の社内での評価と人気はぐんぐん上がるばかりだ。
 そんな坂嶺くんの先輩としての立場も危うくなりつつある神田くんは、今では仕事の用件以外で私に寄りつくこともない。
 
 坂嶺くんの甘え上手な末っ子気質は今もときどき顔を出す。
 でも、どちらかと言えば甘やかされているのは私のほうだ。
 優しさも包容力も愛情表現だって、彼の方が上手で、気がつけばリードされるようにお付き合いをしている。

「あかりさん、俺と一緒に暮らしませんか?」

 お気に入りのレストランで日替わりランチのハンバーグを美味しく食べていると、坂嶺くんから同棲を提案されて心が躍った。
 嬉しいけれど、両親になんて伝えておくべきか悩む私に彼は「俺はいつでも、あかりさんのご両親に挨拶しに行けますよ」と爽やかに笑う。
 愛されていることも、大事にされていることも伝わってきて思わず胸がキュンとなった。

「坂嶺くん、好き」
「キスもハグも出来ないときに、あんまりかわいいこと言わないでください」

 レストランの一角で、珍しく困ったように彼が小声で私を叱る。
 優しい微笑みを浮かべる坂嶺くんに微笑み返すと、ランチのハンバーグはより美味しく感じられる気がした。
< 8 / 8 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

それでは恋をはじめましょう

総文字数/1,763

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
憧れは恋
迷子な私を拾ってくれたのは運命の人でした

総文字数/2,608

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私たちが結ばれるのは まだ少し、先のお話
最強男子はあの子に甘い

総文字数/53,395

恋愛(学園)104ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
彗くんが優しく微笑んで泣きじゃくる私の頭を撫で、 泣き止むまでそばにいてくれたことを今でもよく覚えている――

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop