Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
殺意と憎悪
最初の爆弾攻撃から丸一日がたった。ルクバトはどう攻め落とすかを部下たちと考えている最中だ。何人も偵察に行かせ、北河荘の様子や造りを調べさせている。フォマルハウトはそれらの動きを逐一取材し、帳面に書き留めていく。ある程度文章ができたら都に送り、その記事は翌日の朝刊の一面に載った。カペラはのんびりと待機している。たまにフォマルハウトを捕まえては、「たいくつなのー。ねえ、何かおもしろい話してよ。胸さわっていいから」と、相変わらずのセクハラ発言をしてくる。
そんなこんなで膠着状態が続く中、ある事件が起きた。
「シャウラ! いるんでしょう!! 母さんよ!!」
聞き覚えのある声がした。
「義母さん!?」
何でここに!? フォマルハウトは混乱した。何で蟹の目町にいるんだ!? 近くにいた兵士に聞くと「自分の娘がいるはず。説教しにきたのよ」と憮然としてやってきたという。義母は自分の娘が立てこもっている北河荘に近寄る。
「テロリストに荷担したんですって!? 私は恥ずかしいわよ、あなたみたいな娘を持って!! 子育てをほっぽり出して何しているの!! どこまで私の顔に泥をぬれば気が済むの!!」
するとフォマルハウトが慌てて駆け出す。
「おい、どこに行くんだ!? 勝手に近づくんじゃねえよ!!」
ルクバトが叫んだ。
「あの人をあのまま近寄らせたら危険だ!!」
嫌な予感は当たった。義母の頭上に火花のついた小包が放り投げられたのだ。フォマルハウトが視認して頭を伏せた瞬間、
ドオオオン
という爆音とともに破裂した。爆煙が消え、破裂した場所を見ると、さっきまで義母だったはずの肉塊が散乱していた。
シャウラはその爆発音を旅館の最上階で聞いた。その表情は青ざめていた。
「よくやったよ、シャウラ」
アンタレスが優しい微笑みでシャウラのあごに手を添える。
「我々の邪魔をする者は誰であろうと排除する。例え肉親であってもだ。君は今、心を鬼にして母親に爆弾を投げた。これでまた理想に一歩近づいたんだよ。君はやはり、選ばれた者だ」
シャウラの青白い顔が、恍惚感を帯びた赤いものに変わっていく。赤星党の指導者であり、自分の愛する男が最大級の賛辞をくれたのだ。実母を自らの手で殺害した罪悪感が、次第に薄れていく。
「はい、アンタレス」
頬が桃色に染まり、唇はアンタレスのものと重なっていた。
これでよかったのよ……あの母親は最悪だったわ。幼い頃から「あんたはだめな娘よ!」「生むんじゃなかった!」と、罵詈雑言を浴びせてきた。結婚する時も「あんたなんかが妻になれるわけがないでしょ。勝手に結婚すれば?」と冷めた目でにらんできた。ミアプラが生まれた時も「ふん、たいしてかわいくないねえ。あんたそっくり」と言ってきた。
そして今、シャウラを心配するより自分の顔に泥をぬられたことを責めてきた。もはや限界だった。こんな母親との関係、終わりにしてやる――!! 殺意と憎悪が込められた爆弾が母の頭上に舞い、爆発する瞬間まで見届けた。
直後は気分が悪くなったけど、愛する男の言葉で心は満たされた。やっと、あの毒親の呪いから解放されたんだ!!
2人は奥にある寝室に入ると、服を脱いだ。美しい肢体があらわになる。
「シャウラ、今日は少し疲れたんだ。君の体で僕を癒やしてくれるかい?」
「はい、アンタレスのためなら」
アンタレスはシャウラの胸を優しくなでる。そして、裸で抱き合い、ベッドにうもれていった。
爆発から数秒後、フォマルハウトは頭を上げた。先ほど爆弾が破裂した辺りには、義母が着ていた紫のカーディガンの残骸と、飛び散った腕や胴体の骨、肉片が散らばっている。
何てことを……シャウラ、君は自分の母親を――。
フォマルハウトは愕然とした。確かに、シャウラと義母はあまり仲が良くなかった。義母の毒親っぷりは、フォマルハウトが見ていても明らかであった。しかし、だからと言って自らの手で殺害してしまうとは……。
(どこまで墜ちれば気が済むんだよ…)
しばらくするとカペラたち看護師チームが出てきて、爆発があった付近で生存者を確認し始めた。が、再び煙をまとう物体が投げ出された。
「危ない、カペラ!」
フォマルハウトが叫ぶ。が、今度は爆発せず地面に落ちて煙を発するだけだった。
「何だ!?」
「これは…煙幕か!?」
しばらくすると煙幕が晴れた。そこには倒れ込んだ看護チームの面々がいた。慌てて兵士たちが駆け寄り、「しっかりしろ!」と抱き起こした。看護チームは意識を失っているだけで命に別状はないとのことだ。
凄惨な爆死があった直後なだけに「よかった…」と、一同安堵した。しかし、フォマルハウトはすぐに異変に気付いた。
「カペラ…? カペラがいない!!」
煙が完全に晴れると、地面に1枚の紙切れが落ちていた。
【人質を1人、あずかった】
「まさか…今の煙幕に紛れてカペラをさらったのか!?」
フォマルハウトの顔色が青くなった。
そんなこんなで膠着状態が続く中、ある事件が起きた。
「シャウラ! いるんでしょう!! 母さんよ!!」
聞き覚えのある声がした。
「義母さん!?」
何でここに!? フォマルハウトは混乱した。何で蟹の目町にいるんだ!? 近くにいた兵士に聞くと「自分の娘がいるはず。説教しにきたのよ」と憮然としてやってきたという。義母は自分の娘が立てこもっている北河荘に近寄る。
「テロリストに荷担したんですって!? 私は恥ずかしいわよ、あなたみたいな娘を持って!! 子育てをほっぽり出して何しているの!! どこまで私の顔に泥をぬれば気が済むの!!」
するとフォマルハウトが慌てて駆け出す。
「おい、どこに行くんだ!? 勝手に近づくんじゃねえよ!!」
ルクバトが叫んだ。
「あの人をあのまま近寄らせたら危険だ!!」
嫌な予感は当たった。義母の頭上に火花のついた小包が放り投げられたのだ。フォマルハウトが視認して頭を伏せた瞬間、
ドオオオン
という爆音とともに破裂した。爆煙が消え、破裂した場所を見ると、さっきまで義母だったはずの肉塊が散乱していた。
シャウラはその爆発音を旅館の最上階で聞いた。その表情は青ざめていた。
「よくやったよ、シャウラ」
アンタレスが優しい微笑みでシャウラのあごに手を添える。
「我々の邪魔をする者は誰であろうと排除する。例え肉親であってもだ。君は今、心を鬼にして母親に爆弾を投げた。これでまた理想に一歩近づいたんだよ。君はやはり、選ばれた者だ」
シャウラの青白い顔が、恍惚感を帯びた赤いものに変わっていく。赤星党の指導者であり、自分の愛する男が最大級の賛辞をくれたのだ。実母を自らの手で殺害した罪悪感が、次第に薄れていく。
「はい、アンタレス」
頬が桃色に染まり、唇はアンタレスのものと重なっていた。
これでよかったのよ……あの母親は最悪だったわ。幼い頃から「あんたはだめな娘よ!」「生むんじゃなかった!」と、罵詈雑言を浴びせてきた。結婚する時も「あんたなんかが妻になれるわけがないでしょ。勝手に結婚すれば?」と冷めた目でにらんできた。ミアプラが生まれた時も「ふん、たいしてかわいくないねえ。あんたそっくり」と言ってきた。
そして今、シャウラを心配するより自分の顔に泥をぬられたことを責めてきた。もはや限界だった。こんな母親との関係、終わりにしてやる――!! 殺意と憎悪が込められた爆弾が母の頭上に舞い、爆発する瞬間まで見届けた。
直後は気分が悪くなったけど、愛する男の言葉で心は満たされた。やっと、あの毒親の呪いから解放されたんだ!!
2人は奥にある寝室に入ると、服を脱いだ。美しい肢体があらわになる。
「シャウラ、今日は少し疲れたんだ。君の体で僕を癒やしてくれるかい?」
「はい、アンタレスのためなら」
アンタレスはシャウラの胸を優しくなでる。そして、裸で抱き合い、ベッドにうもれていった。
爆発から数秒後、フォマルハウトは頭を上げた。先ほど爆弾が破裂した辺りには、義母が着ていた紫のカーディガンの残骸と、飛び散った腕や胴体の骨、肉片が散らばっている。
何てことを……シャウラ、君は自分の母親を――。
フォマルハウトは愕然とした。確かに、シャウラと義母はあまり仲が良くなかった。義母の毒親っぷりは、フォマルハウトが見ていても明らかであった。しかし、だからと言って自らの手で殺害してしまうとは……。
(どこまで墜ちれば気が済むんだよ…)
しばらくするとカペラたち看護師チームが出てきて、爆発があった付近で生存者を確認し始めた。が、再び煙をまとう物体が投げ出された。
「危ない、カペラ!」
フォマルハウトが叫ぶ。が、今度は爆発せず地面に落ちて煙を発するだけだった。
「何だ!?」
「これは…煙幕か!?」
しばらくすると煙幕が晴れた。そこには倒れ込んだ看護チームの面々がいた。慌てて兵士たちが駆け寄り、「しっかりしろ!」と抱き起こした。看護チームは意識を失っているだけで命に別状はないとのことだ。
凄惨な爆死があった直後なだけに「よかった…」と、一同安堵した。しかし、フォマルハウトはすぐに異変に気付いた。
「カペラ…? カペラがいない!!」
煙が完全に晴れると、地面に1枚の紙切れが落ちていた。
【人質を1人、あずかった】
「まさか…今の煙幕に紛れてカペラをさらったのか!?」
フォマルハウトの顔色が青くなった。