Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

拠点・北河荘へ

 ある日の午後。東の都の南側で爆発が起きた。さらにその10分後には大市場で、1時間後には中つ都の北側で爆発が起きた。しかし、4度目の爆発は未然に防がれた。時間差で何度もテロを起こすことで「攪乱した後、都の城を狙ってくる」とルクバトが予測し、見事的中。工作員たちを全員逮捕した。
 工作員が持っていた資料などを見ると、赤星党は蟹の目町の旅館「北河荘」を拠点としていることが判明した。そこで、ルクバトを隊長とする鎮圧隊が編成され、派遣されることになった。これに従軍記者や医療チームが加わる。その中にフォマルハウトとカペラも含まれていた。
 出立前日、アルデバラン王に呼び出された3人は、王の間で謁見した。
「この度の任務、極めて危険を伴うものだ。くれぐれも気をつけてな」
「はっ」
 3人はかしこまって頭を下げた。本来なら側近の大臣が声掛けして送り出すものだろうが、アルデバラン王は自分でやりがたる。危険な任務の指揮権が王自身にある以上、せめてもの励ましと思っているのだろう。そのため、一人一人に声を掛ける。
「ルクバト、隊長としての責任は重いがしっかりやってくれ」
「カペラ、北の町での経験を生かしてほしい。看護師チームの長は緊張するかもしれんがな」
 兵隊のリーダーと看護師チームのリーダーにそれぞれ激励の声を掛けた後、フォマルハウトに言った。
「フォマルハウト、娘さんは我々がしっかり見るからのう。記者は1人しかいないが、よろしくな」
 そうなのだ。他の部門はチームが編成されているのに記者だけ自分1人なのだ。派遣隊を編成するにあたり従軍記者を募ったものの、フォマルハウト以外の者は皆怖じ気づいて手を挙げなかった。上司から「お前しか志願者がいなかった。すまん、1人で行ってきてくれ」と頭を下げられた。
 もっとも、フォマルハウトは最初からそのつもりだった。赤星党の過激さはよく分かっている。野次馬根性だけで来られては怪我するだけで足手まといだ。それなら、紫微垣を継承した自分1人が行く方がまだよいと思ったのだ。

 派遣隊は東の都を出発し、中つ都で一泊した後に北西に向かい、山道を突っ切って蟹の目町にたどり着いた。目指す北河荘は町の北西部にある。そのまま進軍すると、その立地に驚いた。
「こりゃあ、やりにくいな…」
 ルクバトが呆然とつぶやく。北河荘は、正面と両脇が岩だらけで、辛うじて狭い庭があるくらいだ。さらに、海に面した場所に建てられていて、背後は断崖絶壁なのである。ルクバト曰く、「籠城するのに理想的な建物」だそうだ。
「どうするんだ? 隊長さん」
 フォマルハウトがたずねた。帳面を取り出し、すでに取材態勢である。
「まずは投降を呼び掛けるか」
 ルクバトは用意したメガホンで、北河荘に向けて怒鳴った。
「お前らは東の都の鎮圧隊に包囲されている! 無駄な抵抗はせず投降しろ! お前らがテロの犯人グループということは分かっているんだ! これ以上罪を重ねるな!」
 とりあえずオーソドックスな説得である。血の気が多いルクバトにすれば、早く突入して一網打尽にしたいところだろう。が、今は隊長の身分なので手堅い手順を踏む。これで応答がなければ、突入する手立てを考えるつもりだった。
 が、赤星党は無視どころか予想外の反応をしてきた。ルクバトの呼び掛けが終わるやいなや、窓の一つがカラッと開いて、中から何かが飛び出てきた。
「ん?」
 フォマルハウトはその物体をのんきに眺めていたが、視認するなり顔色を変えた。
「みんな伏せろ! 爆弾だ!!」
 その声を合図に全員が頭を伏せた。刹那、

 ドガアン

 という爆発音が町に響いた。
「説得は無駄、事実上の宣戦布告と受け取ったぜ」
 ルクバトの目が鋭く光った。これで遠慮なくたたきつぶせると言わんばかりに。
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