Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
カペラ救出
フォマルハウトは順調に進んでいく。2階から3階へ、3階から4階へと上がっていった。その途中で見張りをしていた赤星党の党員数人を、最初の1人と同じ要領で気絶させた。ルクバトは「殺すか戦闘不能にしろ」と言っている。が、さすがに殺人をする度胸はなかったので、不意打ちまがいの方法で戦闘不能にしている。
――これ、紫微垣のやり方としていいのかな?
と思ったが、殺害するよりはマシだろうと開き直った。
やがて4階から5階に続く階段の前に来た時、1人の党員が客室のドアの前で誰かともめている現場を目的した。ドアは開いていて、もめている相手は部屋の入り口で抵抗しているようだ。
「おら、お前はここに引っ込んでいろ!!」
「いやっ、やめて!!」
聞き覚えのある女性の声だった。その党員は相手を突き飛ばして乱暴にドアを閉める。その手には見覚えのある服が――。
(カペラの白衣だ!)
見間違えようがない。看護師の白衣だった。フォマルハウトは瞬時に秘剣・魚釣り星でその党員の足を絡め取り、渾身の力で窓に叩き付けて外に放り投げた。
党員の体はバリイン、という音とともに外に投げ出されていく。
しまった……! ついカッとなってしまった。今の音は上階の敵にも聞かれただろう。しかもここは4階だ。投げ出された党員は重傷、下手をすると死んだかもしれない。
しかし、躊躇している場合ではない。フォマルハウトはすぐに件のドアに駆け寄り、ノブを回す。
「カペラか…?」
小さく声を掛ける。すると、薄暗い中に視認したのは――上半身が裸になった、自分に想いを寄せてくれている女性だった。ふくよかな胸が、月明かりに照らされている。
「ハウト?」
声を出そうとしたカペラの唇を、フォマルハウトは「シッ」と人差し指で遮る。そして、そっと抱き寄せた。
「大丈夫か、けがはないか?」
「うん、頬を叩かれて服を破かれたけど…命に別状はないよ」
「よかった……」
カペラは強い。こんな目に合ったら多くの女性は泣き出すだろう。生来の性格も多少はあるだろうが、フォマルハウトとの旅で度胸がついたのかもしれない。
フォマルハウトは、紫微垣として1人で潜入したこと、9時になったらルクバトたちが突入することを伝えた。
「とにかくこの部屋を出よう。さっき、見張りを派手に放り投げたから敵も異変に気付いたかもしれない」
「待ってハウト」
カペラが真顔で言う。
「その前にご褒美よ、胸触っていいよ。声は出さないから」
「あなたね……」
自分の胸を両手で抱え上げるカペラに、フォマルハウトは呆れる。こんな時まで下ネタとアピールを忘れないとは……。フォマルハウトは、持っていたタオルをカペラの胸に巻いた。
「ねえ、ハウト。奥さんのことなんだけど……」
カペラが曇った表情で言った。
「シャウラ…あなたの奥さん、あなたを殺すつもりみたいよ」
「…そうか」
フォマルハウトは淡々と返す。
「ショックじゃないの? だって奥さんが……」
「もう夫婦じゃないよ。いや、正式にはまだ夫婦だけど、こんな仲違いして元に戻れるわけないよ」
シャウラのことはもうあきらめていた。育児放棄、アンタレスとの不倫、実母の殺害――赤星党を制圧したとしても、彼女とやり直すことはできないだろう。人としてもはや信頼できなくなった。
「カペラ、この戦いが終わったらあなたとのことを考えたい。だから…」
フォマルハウトはカペラの肩を抱き寄せる。
「必ず生きて帰ろう」
「…うん」
フォマルハウトは時計をちらっと見た。ルクバトたちの突入まで一時間を切っていた。
――これ、紫微垣のやり方としていいのかな?
と思ったが、殺害するよりはマシだろうと開き直った。
やがて4階から5階に続く階段の前に来た時、1人の党員が客室のドアの前で誰かともめている現場を目的した。ドアは開いていて、もめている相手は部屋の入り口で抵抗しているようだ。
「おら、お前はここに引っ込んでいろ!!」
「いやっ、やめて!!」
聞き覚えのある女性の声だった。その党員は相手を突き飛ばして乱暴にドアを閉める。その手には見覚えのある服が――。
(カペラの白衣だ!)
見間違えようがない。看護師の白衣だった。フォマルハウトは瞬時に秘剣・魚釣り星でその党員の足を絡め取り、渾身の力で窓に叩き付けて外に放り投げた。
党員の体はバリイン、という音とともに外に投げ出されていく。
しまった……! ついカッとなってしまった。今の音は上階の敵にも聞かれただろう。しかもここは4階だ。投げ出された党員は重傷、下手をすると死んだかもしれない。
しかし、躊躇している場合ではない。フォマルハウトはすぐに件のドアに駆け寄り、ノブを回す。
「カペラか…?」
小さく声を掛ける。すると、薄暗い中に視認したのは――上半身が裸になった、自分に想いを寄せてくれている女性だった。ふくよかな胸が、月明かりに照らされている。
「ハウト?」
声を出そうとしたカペラの唇を、フォマルハウトは「シッ」と人差し指で遮る。そして、そっと抱き寄せた。
「大丈夫か、けがはないか?」
「うん、頬を叩かれて服を破かれたけど…命に別状はないよ」
「よかった……」
カペラは強い。こんな目に合ったら多くの女性は泣き出すだろう。生来の性格も多少はあるだろうが、フォマルハウトとの旅で度胸がついたのかもしれない。
フォマルハウトは、紫微垣として1人で潜入したこと、9時になったらルクバトたちが突入することを伝えた。
「とにかくこの部屋を出よう。さっき、見張りを派手に放り投げたから敵も異変に気付いたかもしれない」
「待ってハウト」
カペラが真顔で言う。
「その前にご褒美よ、胸触っていいよ。声は出さないから」
「あなたね……」
自分の胸を両手で抱え上げるカペラに、フォマルハウトは呆れる。こんな時まで下ネタとアピールを忘れないとは……。フォマルハウトは、持っていたタオルをカペラの胸に巻いた。
「ねえ、ハウト。奥さんのことなんだけど……」
カペラが曇った表情で言った。
「シャウラ…あなたの奥さん、あなたを殺すつもりみたいよ」
「…そうか」
フォマルハウトは淡々と返す。
「ショックじゃないの? だって奥さんが……」
「もう夫婦じゃないよ。いや、正式にはまだ夫婦だけど、こんな仲違いして元に戻れるわけないよ」
シャウラのことはもうあきらめていた。育児放棄、アンタレスとの不倫、実母の殺害――赤星党を制圧したとしても、彼女とやり直すことはできないだろう。人としてもはや信頼できなくなった。
「カペラ、この戦いが終わったらあなたとのことを考えたい。だから…」
フォマルハウトはカペラの肩を抱き寄せる。
「必ず生きて帰ろう」
「…うん」
フォマルハウトは時計をちらっと見た。ルクバトたちの突入まで一時間を切っていた。