Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
大海嘯②
午後2時45分――。すさまじい揺れが星の大地を襲った。東の都の住人たちは、屋内にいる者は机などの下に隠れ、屋外の者は地面に座り込んで揺れが治まるのを待った。
5分ほど揺れると地震は治まった。
「…今の何だよ?」
カノープスは道場で体勢を低くしていた。周りに障害物がないので特にけがはなかった。が、壁に掛かっていた木刀などがガラガラと落ちたのだ。
「アルセフィナ…」
ふと、妹の名前を呼んだ。安否を確認しなければ……カノープスはダッと寮に向かって掛けだした。
地震が起きたその時、アヴィオールはアルセフィナが部屋で倒れたような姿を見た。とっさに七星剣で五の秘剣・錨星をその窓に向けて発射し、身を躍り出して彼女の部屋に突入したのだ。幸い、アルセフィナはよろけて転んだだけで、けがはしていなかった。彼女の背中を抱えて起こし、「大丈夫?」と気遣った。アルセフィナは顔を赤くして「うん…」とうなずいた。
そこへカノープスが飛び込んできた。
「アルセフィナ! 大丈夫か!?」
と、そこにいたのがアヴィオールだったから驚く。
「あ? 何でお前がここに?」
「え、いや、その…アルセフィナが転ぶのが下から見えて、錨星でここに来たんだ」
しどろもどろに答えるアヴィオールに対し、カノープスは「あ、そう」とぶっきらぼうに返す。そして、「とりあえず妹はお前に任せる。俺は他を見てくる」と言い残し、弾丸のように出て行った。
中庭にいたミモザは、ミアプラが気にかかった。安全な中庭から天牢庵の屋内に飛び込み、一直線にミアプラの部屋に向かった。ミアプラの部屋はドアが開かず、「誰か、助けて!」と叫ぶ声がした。
「ミアプラ、ドアを壊すから離れるんだ!」
ミモザは三の秘剣・三連突きを繰り出してドアを破壊した。
「ミアプラ、無事か!?」
「ミモザ!!」
2人はしっかりと抱き合った。やっと思いが通じ合ったのだ、失いたくないと言わんばかりにしばらく抱擁を続けた。
そこにカノープスがやってきた。
「お前ら、無事か…何やってんだ?」
「え、あ、いや…」
うろたえるミモザに対して「あんたには関係ないでしょ!」と突っぱねるミアプラ。が、当のカノープスは怪訝な顔になりつつも、「厨房を見てくる」とさっさと行ってしまった。
厨房に行くと調理器具や食材がひっくり返ってめちゃくちゃになっていた。が、こちらは誰もいない。八穀のスタッフは皆、避難したようだ。
「うわあああああ!!」
外から叫び声がした。遠くの方だ。カノープスは外に出て駆けだした。
「つ、津波だ!」
「大海嘯だ!!」
東の都の南東側から大きな津波が押し寄せてきている。これが、かつて星の大地を震撼させた大海嘯か!
人々が高台に向かって逃げる。その中を、ひと組の男女が逆行するかのように海側に走って行く。フォマルハウトとカペラだった。
「師匠!!」
カノープスも後を追う。その先にいたのは……ガクルックスとアクルックスだった。そしてその横には見覚えのある女性が――。
「おふくろ!」
妖しい雰囲気をまとったその女性は、母親のマルケブだ。
「一の秘剣・魚釣り星!」
フォマルハウトは秘剣を繰り出す。が、3人にあっけなく避けられてしまった。
「ハウト!」
「カペラ、あいつらがポラリスを盗んだようだな。大海嘯を起こして都を混乱させ、その隙に人を斬って遺体を吸い取るつもりだ」
ガクルックスの持つ剣が、少し前より大きくなっている。遺体を吸収した効果だろうか。
「あの2人は僕が倒す。元師匠としての責務だ」
しかし、双子は秘剣の攻撃をどんどんかわし、フォマルハウトとの間合いを詰めていった。そして、2mほどの間合いに入った時――アクルックスが手に持っていたものをかざした。それは黒い十字架だった。
「な、何だ!?」
黒い光が辺りを包み、フォマルハウトが目を開けた時には信じられない光景があった。
「…シャウラ?」
目の前に、今は亡き前妻――シャウラがいたのだ。が、彼女は微笑みながら、あの黒い剣を元夫の胸にぐさっ――と、突き刺した。
「か、は……」
「あらあら、15年前と逆になっちゃったわね、フォマルハウト。地獄に道連れにしてあげるわ」
そう言うなり、シャウラはフォマルハウトの胸を横一文字に切り裂いた。
5分ほど揺れると地震は治まった。
「…今の何だよ?」
カノープスは道場で体勢を低くしていた。周りに障害物がないので特にけがはなかった。が、壁に掛かっていた木刀などがガラガラと落ちたのだ。
「アルセフィナ…」
ふと、妹の名前を呼んだ。安否を確認しなければ……カノープスはダッと寮に向かって掛けだした。
地震が起きたその時、アヴィオールはアルセフィナが部屋で倒れたような姿を見た。とっさに七星剣で五の秘剣・錨星をその窓に向けて発射し、身を躍り出して彼女の部屋に突入したのだ。幸い、アルセフィナはよろけて転んだだけで、けがはしていなかった。彼女の背中を抱えて起こし、「大丈夫?」と気遣った。アルセフィナは顔を赤くして「うん…」とうなずいた。
そこへカノープスが飛び込んできた。
「アルセフィナ! 大丈夫か!?」
と、そこにいたのがアヴィオールだったから驚く。
「あ? 何でお前がここに?」
「え、いや、その…アルセフィナが転ぶのが下から見えて、錨星でここに来たんだ」
しどろもどろに答えるアヴィオールに対し、カノープスは「あ、そう」とぶっきらぼうに返す。そして、「とりあえず妹はお前に任せる。俺は他を見てくる」と言い残し、弾丸のように出て行った。
中庭にいたミモザは、ミアプラが気にかかった。安全な中庭から天牢庵の屋内に飛び込み、一直線にミアプラの部屋に向かった。ミアプラの部屋はドアが開かず、「誰か、助けて!」と叫ぶ声がした。
「ミアプラ、ドアを壊すから離れるんだ!」
ミモザは三の秘剣・三連突きを繰り出してドアを破壊した。
「ミアプラ、無事か!?」
「ミモザ!!」
2人はしっかりと抱き合った。やっと思いが通じ合ったのだ、失いたくないと言わんばかりにしばらく抱擁を続けた。
そこにカノープスがやってきた。
「お前ら、無事か…何やってんだ?」
「え、あ、いや…」
うろたえるミモザに対して「あんたには関係ないでしょ!」と突っぱねるミアプラ。が、当のカノープスは怪訝な顔になりつつも、「厨房を見てくる」とさっさと行ってしまった。
厨房に行くと調理器具や食材がひっくり返ってめちゃくちゃになっていた。が、こちらは誰もいない。八穀のスタッフは皆、避難したようだ。
「うわあああああ!!」
外から叫び声がした。遠くの方だ。カノープスは外に出て駆けだした。
「つ、津波だ!」
「大海嘯だ!!」
東の都の南東側から大きな津波が押し寄せてきている。これが、かつて星の大地を震撼させた大海嘯か!
人々が高台に向かって逃げる。その中を、ひと組の男女が逆行するかのように海側に走って行く。フォマルハウトとカペラだった。
「師匠!!」
カノープスも後を追う。その先にいたのは……ガクルックスとアクルックスだった。そしてその横には見覚えのある女性が――。
「おふくろ!」
妖しい雰囲気をまとったその女性は、母親のマルケブだ。
「一の秘剣・魚釣り星!」
フォマルハウトは秘剣を繰り出す。が、3人にあっけなく避けられてしまった。
「ハウト!」
「カペラ、あいつらがポラリスを盗んだようだな。大海嘯を起こして都を混乱させ、その隙に人を斬って遺体を吸い取るつもりだ」
ガクルックスの持つ剣が、少し前より大きくなっている。遺体を吸収した効果だろうか。
「あの2人は僕が倒す。元師匠としての責務だ」
しかし、双子は秘剣の攻撃をどんどんかわし、フォマルハウトとの間合いを詰めていった。そして、2mほどの間合いに入った時――アクルックスが手に持っていたものをかざした。それは黒い十字架だった。
「な、何だ!?」
黒い光が辺りを包み、フォマルハウトが目を開けた時には信じられない光景があった。
「…シャウラ?」
目の前に、今は亡き前妻――シャウラがいたのだ。が、彼女は微笑みながら、あの黒い剣を元夫の胸にぐさっ――と、突き刺した。
「か、は……」
「あらあら、15年前と逆になっちゃったわね、フォマルハウト。地獄に道連れにしてあげるわ」
そう言うなり、シャウラはフォマルハウトの胸を横一文字に切り裂いた。