Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
戦況
デネボラが北の町に戻ってきた翌日の夜。カストルは仲間の兵たち5人と、貧民街の一画に隠れていた。すると、1人の兵が忍び足で急ぎながら戻ってきた。
「ワサト、どうだった?」
カストルが戻ってきた仲間に聞いた。
「やはり妙な者たちがいる。あの小屋に木刀や棍棒を運んでいるようだ」
その数も1本2本でなく、数十本だという。
「…やるか」
カストルがつぶやいた。
「いいのか?」
「ああ、できればとっ捕まえて企みを吐かせたいな」
カストルは手に持っていた手槍を握りしめる。隠れることを考えて、いつもの長槍は装備していない。
カストルは自分を含めた6人の兵を2人ひと組に振り分けて、正面と左右の3カ所に散らせた。そして、正面にいたカストルの組が先陣をきって飛び出すと、他の2組も左右から襲撃した。
「うわあああ!!」
敵は応戦しようとしたが所詮はゲリラ兵だ。正式な訓練を受けた警備兵には適わない。10人前後いた敵はあっという間に制圧された。
「で、その後はどうしたんだ?」
「それがよ、捕まえたゲリラどもはただの運び屋だったんだ。だからレグルスのことなんか知らない、と言っているんだよ」
カストルがポルックスに事の一部始終を伝えると、ポルックスは額に手を当てて黙りこんだ。カストル率いる小部隊が奇襲を仕掛け、敵を制圧して武器一式を取り上げたわけだが、敵というより武器の運び屋で、詳しいことを聞かされていないという。
「嘘だろう」と誰もが思ったが、積荷リストと契約の書類があったので信憑性が高い。何よりもその運び屋たちが50代前後の初老の男たちだった。
「レグルス先生は、子供たちを救うという大義名分でやっている。その兵たちも多くは子供だ。50代のおっさんたちは仲間としてお呼びじゃないし、何より今の子供たちの問題を作った世代を仲間にしようとは思わない、というところか」
金で雇いつつも、警備兵に撃破されたらそのまま使い捨てにするつもりだったのか。いずれにしても、かなり用意周到に準備を進めていることがうかがえた。
「もういいか、ポルックス? 俺もそろそろ持ち場に戻らなきゃならねえ」
「…お前さ、もう少していねいにレポート書けんのか?」
ポルックスが言う「ていねいなレポート」とは字のうまさではなく、文章の巧拙である。カストルは学舎時代から勉強が苦手で、特に言語に関してはいつも赤点ギリギリだった。そのくせに字はきれいなのである。奇襲についての報告も、箇条書きで数行書かれているだけだったため、「こんなんで上に報告できるか!」とポルックスが呼び出したのだ。
「まあいい、警備兵の指揮系統でやってくれればいいさ」
ポルックスはそう言ってカストルを返した。
その数時間後。ポルックスはカストル、アルクトゥルスを役場に集めた。夕方でもあったため、出前をとって食事をしながらの打ち合わせをする。
「アルクトゥルス、どう思う?」
ポルックスが尋ねる。敵の狙いは何なのだろう。
「まあ、ポラリスを狙ってくることはほぼ間違いないだろうな」
「だけどよ、なかなか奪いに来ねえじゃん」
カストルの指摘はもっともだった。アルクトゥルス以外の紫微垣――例えば、フォマルハウトの時代はアンタレスがポラリスを奪い、妖星疫が蔓延した。シリウスの時は悪友2人やアルタイルの盗賊団がまっしぐらに奪いに来た。が、レグルスの一団は北の町で怪しい動きを見せるだけで、奪いに来る気配がほとんどない。
先日、レグルスと再会した時も一戦交えることもなく引いていった。一体何が目的なんだ……。
「しかし見てみろ、やつらの布陣は完全に北辰の祠を囲むようにしている」
ポルックスは地図を広げた。地図の左上には日付が、北の町の各所には赤い丸と数字が書かれている。日付は地図に印を付けた日で、赤い丸が不審者が発見された場所、数字がその人数である。
「赤い丸が増えて、各所の数字が減っているな…」
アルクトゥルスが指摘する。1週間前と比べると差は明らかだった。
「…総攻撃の布陣だぜ、こりゃ」
カストルが冷や汗を流しながら言った。
「総攻撃?」
「つまり、それぞれの持ち場に兵をつかせた上で、日時を決めて一斉に襲撃するんだ。兵法の本で読んだことがある」
「本? お前が?」
ポルックスが高い声を上げた。こいつは読書が苦手だったはずでは……。
「警備兵になった頃、先輩に言われて読んだんだよ。この増え方だと、数日後には決行されるだろうぜ」
「ワサト、どうだった?」
カストルが戻ってきた仲間に聞いた。
「やはり妙な者たちがいる。あの小屋に木刀や棍棒を運んでいるようだ」
その数も1本2本でなく、数十本だという。
「…やるか」
カストルがつぶやいた。
「いいのか?」
「ああ、できればとっ捕まえて企みを吐かせたいな」
カストルは手に持っていた手槍を握りしめる。隠れることを考えて、いつもの長槍は装備していない。
カストルは自分を含めた6人の兵を2人ひと組に振り分けて、正面と左右の3カ所に散らせた。そして、正面にいたカストルの組が先陣をきって飛び出すと、他の2組も左右から襲撃した。
「うわあああ!!」
敵は応戦しようとしたが所詮はゲリラ兵だ。正式な訓練を受けた警備兵には適わない。10人前後いた敵はあっという間に制圧された。
「で、その後はどうしたんだ?」
「それがよ、捕まえたゲリラどもはただの運び屋だったんだ。だからレグルスのことなんか知らない、と言っているんだよ」
カストルがポルックスに事の一部始終を伝えると、ポルックスは額に手を当てて黙りこんだ。カストル率いる小部隊が奇襲を仕掛け、敵を制圧して武器一式を取り上げたわけだが、敵というより武器の運び屋で、詳しいことを聞かされていないという。
「嘘だろう」と誰もが思ったが、積荷リストと契約の書類があったので信憑性が高い。何よりもその運び屋たちが50代前後の初老の男たちだった。
「レグルス先生は、子供たちを救うという大義名分でやっている。その兵たちも多くは子供だ。50代のおっさんたちは仲間としてお呼びじゃないし、何より今の子供たちの問題を作った世代を仲間にしようとは思わない、というところか」
金で雇いつつも、警備兵に撃破されたらそのまま使い捨てにするつもりだったのか。いずれにしても、かなり用意周到に準備を進めていることがうかがえた。
「もういいか、ポルックス? 俺もそろそろ持ち場に戻らなきゃならねえ」
「…お前さ、もう少していねいにレポート書けんのか?」
ポルックスが言う「ていねいなレポート」とは字のうまさではなく、文章の巧拙である。カストルは学舎時代から勉強が苦手で、特に言語に関してはいつも赤点ギリギリだった。そのくせに字はきれいなのである。奇襲についての報告も、箇条書きで数行書かれているだけだったため、「こんなんで上に報告できるか!」とポルックスが呼び出したのだ。
「まあいい、警備兵の指揮系統でやってくれればいいさ」
ポルックスはそう言ってカストルを返した。
その数時間後。ポルックスはカストル、アルクトゥルスを役場に集めた。夕方でもあったため、出前をとって食事をしながらの打ち合わせをする。
「アルクトゥルス、どう思う?」
ポルックスが尋ねる。敵の狙いは何なのだろう。
「まあ、ポラリスを狙ってくることはほぼ間違いないだろうな」
「だけどよ、なかなか奪いに来ねえじゃん」
カストルの指摘はもっともだった。アルクトゥルス以外の紫微垣――例えば、フォマルハウトの時代はアンタレスがポラリスを奪い、妖星疫が蔓延した。シリウスの時は悪友2人やアルタイルの盗賊団がまっしぐらに奪いに来た。が、レグルスの一団は北の町で怪しい動きを見せるだけで、奪いに来る気配がほとんどない。
先日、レグルスと再会した時も一戦交えることもなく引いていった。一体何が目的なんだ……。
「しかし見てみろ、やつらの布陣は完全に北辰の祠を囲むようにしている」
ポルックスは地図を広げた。地図の左上には日付が、北の町の各所には赤い丸と数字が書かれている。日付は地図に印を付けた日で、赤い丸が不審者が発見された場所、数字がその人数である。
「赤い丸が増えて、各所の数字が減っているな…」
アルクトゥルスが指摘する。1週間前と比べると差は明らかだった。
「…総攻撃の布陣だぜ、こりゃ」
カストルが冷や汗を流しながら言った。
「総攻撃?」
「つまり、それぞれの持ち場に兵をつかせた上で、日時を決めて一斉に襲撃するんだ。兵法の本で読んだことがある」
「本? お前が?」
ポルックスが高い声を上げた。こいつは読書が苦手だったはずでは……。
「警備兵になった頃、先輩に言われて読んだんだよ。この増え方だと、数日後には決行されるだろうぜ」