Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
一夜を②
風呂からあがったアルクトゥルスは居間に戻った。この時期は暑いため、上半身は裸である。ソファではデネボラが横になって寝ていた。
(無防備だな……)
と思いながら彼女に近づく。昼間は気付かなかったが、顔の目の下にくまができていて、頬にうっすらと傷跡もある。この4年間で相当の苦労をしてきたのがうかがえた。
「ここで寝ていたら疲れは取れないだろう」
アルクトゥルスはデネボラをお姫様抱っこして、自分の寝室に連れて行った。抱き上げた時にいろいろ見えそうになったが何とか目を反らす。ベッドに寝かせると、タオルケットを掛けようとした。彼女をベッドで寝かせ、自分は床で寝るつもりだった。
ところが、アルクトゥルスがかがんだ体を起こそうとしたら、突然デネボラの腕が伸びてきた。
「!?」
両腕を首の後ろに回され、そのまま抱き寄せられるとデネボラの体に覆い被さってしまった。
「――ちょっ…」
焦るアルクトゥルスだが、密着したまま寝返りをうたれ、今度はデネボラがアルクトゥルスの上に被さる。シャツ一枚しか来ていないため、彼女の胸や肢体の感触がそのまま自分の体に伝わる。
突然、デネボラが目を開けた。
「あ……」
アルクトゥルスは固まった。彼女をベッドで寝かせようと思っただけなのだが、これでは寝込みを襲おうとしたと誤解される……。しかし、デネボラは寝ぼけ眼で顔を近づけ、そのままアルクトゥルスの唇に自分の唇を重ねた。
「っ!!」
しかも舌を入れてくる。おいおい、どうしたんだデネボラ!? すると今度はシャツを脱ぎ捨て、体を密着させてきて、細い指先でアルクトゥルスの体をいじり始めた。しかも彼女は今、完全に裸である。
落ち着け自分、彼女は寝ぼけているんだ、きっとレグルスのことを思ってのことだ、耐えろ、耐えるんだ!
しばらくすると、デネボラの動きが止まり、スースーと寝息を立て始めた。よかった…寝たか。アルクトゥルスは床に降りようと思ったが、急に眠気が襲ってきたのでそのままベッドで寝落ちした。
翌朝。アルクトゥルスはまどろみから覚めようとしていた。すると、「ちゅっ」と頬に何かが当たる音がした。今の音、もしかして……?
「おはよ、アルク」
横にはデネボラがいた。
「!? お、おはよう……」
「アルク、ありがとうね。ベッドまで運んでくれたのね」
昨夜、寝る前のことを思い出して顔が赤くなった。が、デネボラは笑顔でけろりとしている。服は…よかった、シャツを着ていた。
(といっても、目のやり場に困るんだが)
居間にいくと食事の用意ができている。
「泊めてもらったお礼…ってほどじゃないけどね。私、こんなことしかできないから」
「い、いや、十分だよ。ありがとう」
2人して朝食を食べ始める。何だか――夫婦みたいだ。憧れの女性と一夜を共にして、といっても何もしていないが――しかもごはんも食べられるなんて。
「ん? どうかした?」
どうやらボーッとして、デネボラの顔を見ていたようだ。
「い、いや、何でもない」
「そういえば私、裸で寝ていたけど、あなたに変なことしなかった? 寝ぼけると大胆になっちゃうことがあるの」
これを聞いてアルクトゥルスはさらに顔が赤くなる。
「だ、大丈夫! 何もなかったから!」
「別に襲ってきてもよかったのに。それくらいのお礼もさせてよ」
「い、いやけっこうです!」
デネボラはクスクスと笑った。その表情が4年前に学舎を卒業した時のもので、アルクトゥルスは少しほっとした。
「…アルク、ごめんね」
「え?」
デネボラから笑顔が消える。そして箸を置いて謝ってきた。
「レグルスのせいで仕事が大変になってしまって…おまけに私も居候することになって、迷惑だよね」
「……気にするな」
アルクトゥルスからそれまでのどぎまぎした表情が消え、任務中の厳しい表情に戻っていた。
「ポラリスを護ることと賊を退けること、それが今の俺の使命だ。相手がたとえかつての恩師であろうと……平和を乱すようであれば仕留めるさ」
その言葉を聞き、デネボラは複雑な表情で笑った。
(無防備だな……)
と思いながら彼女に近づく。昼間は気付かなかったが、顔の目の下にくまができていて、頬にうっすらと傷跡もある。この4年間で相当の苦労をしてきたのがうかがえた。
「ここで寝ていたら疲れは取れないだろう」
アルクトゥルスはデネボラをお姫様抱っこして、自分の寝室に連れて行った。抱き上げた時にいろいろ見えそうになったが何とか目を反らす。ベッドに寝かせると、タオルケットを掛けようとした。彼女をベッドで寝かせ、自分は床で寝るつもりだった。
ところが、アルクトゥルスがかがんだ体を起こそうとしたら、突然デネボラの腕が伸びてきた。
「!?」
両腕を首の後ろに回され、そのまま抱き寄せられるとデネボラの体に覆い被さってしまった。
「――ちょっ…」
焦るアルクトゥルスだが、密着したまま寝返りをうたれ、今度はデネボラがアルクトゥルスの上に被さる。シャツ一枚しか来ていないため、彼女の胸や肢体の感触がそのまま自分の体に伝わる。
突然、デネボラが目を開けた。
「あ……」
アルクトゥルスは固まった。彼女をベッドで寝かせようと思っただけなのだが、これでは寝込みを襲おうとしたと誤解される……。しかし、デネボラは寝ぼけ眼で顔を近づけ、そのままアルクトゥルスの唇に自分の唇を重ねた。
「っ!!」
しかも舌を入れてくる。おいおい、どうしたんだデネボラ!? すると今度はシャツを脱ぎ捨て、体を密着させてきて、細い指先でアルクトゥルスの体をいじり始めた。しかも彼女は今、完全に裸である。
落ち着け自分、彼女は寝ぼけているんだ、きっとレグルスのことを思ってのことだ、耐えろ、耐えるんだ!
しばらくすると、デネボラの動きが止まり、スースーと寝息を立て始めた。よかった…寝たか。アルクトゥルスは床に降りようと思ったが、急に眠気が襲ってきたのでそのままベッドで寝落ちした。
翌朝。アルクトゥルスはまどろみから覚めようとしていた。すると、「ちゅっ」と頬に何かが当たる音がした。今の音、もしかして……?
「おはよ、アルク」
横にはデネボラがいた。
「!? お、おはよう……」
「アルク、ありがとうね。ベッドまで運んでくれたのね」
昨夜、寝る前のことを思い出して顔が赤くなった。が、デネボラは笑顔でけろりとしている。服は…よかった、シャツを着ていた。
(といっても、目のやり場に困るんだが)
居間にいくと食事の用意ができている。
「泊めてもらったお礼…ってほどじゃないけどね。私、こんなことしかできないから」
「い、いや、十分だよ。ありがとう」
2人して朝食を食べ始める。何だか――夫婦みたいだ。憧れの女性と一夜を共にして、といっても何もしていないが――しかもごはんも食べられるなんて。
「ん? どうかした?」
どうやらボーッとして、デネボラの顔を見ていたようだ。
「い、いや、何でもない」
「そういえば私、裸で寝ていたけど、あなたに変なことしなかった? 寝ぼけると大胆になっちゃうことがあるの」
これを聞いてアルクトゥルスはさらに顔が赤くなる。
「だ、大丈夫! 何もなかったから!」
「別に襲ってきてもよかったのに。それくらいのお礼もさせてよ」
「い、いやけっこうです!」
デネボラはクスクスと笑った。その表情が4年前に学舎を卒業した時のもので、アルクトゥルスは少しほっとした。
「…アルク、ごめんね」
「え?」
デネボラから笑顔が消える。そして箸を置いて謝ってきた。
「レグルスのせいで仕事が大変になってしまって…おまけに私も居候することになって、迷惑だよね」
「……気にするな」
アルクトゥルスからそれまでのどぎまぎした表情が消え、任務中の厳しい表情に戻っていた。
「ポラリスを護ることと賊を退けること、それが今の俺の使命だ。相手がたとえかつての恩師であろうと……平和を乱すようであれば仕留めるさ」
その言葉を聞き、デネボラは複雑な表情で笑った。