Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
大海嘯(だいかいしょう)
大海嘯――星の大地に住む人間なら幼児でも知っている。この大地ができてから、幾度か都や町を破壊してきた自然災害だ。過去に万単位の犠牲者を出した大津波……それが今、自分たちに襲いかかってきたのだ。
――間に合わなかった!
シリウスは唇をかんだ。災害が起きる前に奪還し、北辰の祠に奉安したかったが、できなかったのだ。
リゲルを見ると、慌てて浜の方に歩いている。しかし、服が海水を吸って動きが鈍い。
「早くしろ、リゲル!!」
津波は徐々に背後に迫ってきている。瞬く間にリゲルを飲み込もうというところまで来た。
「五の秘剣・錨星!」
シリウスはリゲルに向かって錨を飛ばした。運良く、リゲルの足に巻き付くのが見えた。津波がリゲルを飲み込んだ瞬間、シリウスは渾身の力で錨を引き上げる。
「リゲル!!」
しかし、シリウスは愕然とした。巻き付いていたのはリゲルが履いていたブーツだったのだ。
「失敗か!!」
沖を見ると、もうリゲルの姿が視認できない。それどころか、津波がシリウスめがけてやって来ていた。
「……!」
シリウスは歯ぎしりをしつつ、町の方に走り出した。
「すごい地震だったなあ、みんな大丈夫か?」
「うちはたんすが倒れて大わらわだよ」
都の南部の住人たちが、家の片付けに追われている。家の中は家具という家具が倒れて滅茶苦茶になっているのだ。
そこに走ってくる人影があった。手に柄杓型の金属の棒を持っている。
「何やってるんだ、逃げろ!! 大海嘯が来るぞ!!」
その男――シリウスは、住人に怒鳴りながら北へ向かう。その様子を、住人たちは不思議そうに見送った。
「何だ、あれ?」
「さあ…?」
シリウスは、きょとんとした住人たちに苛立ってきた。なぜ逃げない!? 大海嘯が来るって言っているのに……。
「うわああ!!」
住人の1人が叫んだ。
「津波だ!!」
高さ30メートルはある黒い波の壁が、町を飲み込み始めている。これを見た人々は、ようやく事の大きさに気付いた。
「早く逃げろ!! 北に向かえ!!」
シリウスだけでなく他の人も叫び始めた。しかし、逃げ遅れた老人や馬、家族づれなどが津波に飲み込まれていく。威力を増した津波は、家々の壁や屋根を次々に破壊していった。
――導きの祠の幽霊が、また現実化してしまった!
目の前で犠牲者が増えるのに何もできない。シリウスは歯を食いしばって北を目指した。
大海嘯は平野部の家々を、やがて、大市場に及ぶと店の壁や椅子、机、商品をも飲み込んでいく。人々は逃げ惑い、遅れた者は津波の餌食となっていった。
「シリウス!!」
宿まで戻ったシリウスは、ミラ、スピカと合流した。が、背後まで津波が迫ってきたので「逃げるぞ!!」と叫んだ。
大海嘯を予測し、先に2人を逃がしておくべきだったと思った。が、今そんなことを考えても仕方ない。
坂道を上り高台まで来ると津波は届かなくなった。同じように避難してきた人が大勢いる。
3人は眼下の町を振り返り、息を飲む。漆黒の波が都を覆っている。つい先ほどまで人々の営みがなされていたのに、もはや跡形もない。
「どうしよう、シリウス」
ミラが不安そうに聞いた。
「決まっている。ポラリスを奉安しにいくぞ」
そう答えたとたん、また地震が起きた。余震にしては大きい。3人は近くの木につかまり、何とか持ちこたえた。
「急ぎましょう、シリウス!」
スピカに促され、3人はさらに北に向けて走った。
――間に合わなかった!
シリウスは唇をかんだ。災害が起きる前に奪還し、北辰の祠に奉安したかったが、できなかったのだ。
リゲルを見ると、慌てて浜の方に歩いている。しかし、服が海水を吸って動きが鈍い。
「早くしろ、リゲル!!」
津波は徐々に背後に迫ってきている。瞬く間にリゲルを飲み込もうというところまで来た。
「五の秘剣・錨星!」
シリウスはリゲルに向かって錨を飛ばした。運良く、リゲルの足に巻き付くのが見えた。津波がリゲルを飲み込んだ瞬間、シリウスは渾身の力で錨を引き上げる。
「リゲル!!」
しかし、シリウスは愕然とした。巻き付いていたのはリゲルが履いていたブーツだったのだ。
「失敗か!!」
沖を見ると、もうリゲルの姿が視認できない。それどころか、津波がシリウスめがけてやって来ていた。
「……!」
シリウスは歯ぎしりをしつつ、町の方に走り出した。
「すごい地震だったなあ、みんな大丈夫か?」
「うちはたんすが倒れて大わらわだよ」
都の南部の住人たちが、家の片付けに追われている。家の中は家具という家具が倒れて滅茶苦茶になっているのだ。
そこに走ってくる人影があった。手に柄杓型の金属の棒を持っている。
「何やってるんだ、逃げろ!! 大海嘯が来るぞ!!」
その男――シリウスは、住人に怒鳴りながら北へ向かう。その様子を、住人たちは不思議そうに見送った。
「何だ、あれ?」
「さあ…?」
シリウスは、きょとんとした住人たちに苛立ってきた。なぜ逃げない!? 大海嘯が来るって言っているのに……。
「うわああ!!」
住人の1人が叫んだ。
「津波だ!!」
高さ30メートルはある黒い波の壁が、町を飲み込み始めている。これを見た人々は、ようやく事の大きさに気付いた。
「早く逃げろ!! 北に向かえ!!」
シリウスだけでなく他の人も叫び始めた。しかし、逃げ遅れた老人や馬、家族づれなどが津波に飲み込まれていく。威力を増した津波は、家々の壁や屋根を次々に破壊していった。
――導きの祠の幽霊が、また現実化してしまった!
目の前で犠牲者が増えるのに何もできない。シリウスは歯を食いしばって北を目指した。
大海嘯は平野部の家々を、やがて、大市場に及ぶと店の壁や椅子、机、商品をも飲み込んでいく。人々は逃げ惑い、遅れた者は津波の餌食となっていった。
「シリウス!!」
宿まで戻ったシリウスは、ミラ、スピカと合流した。が、背後まで津波が迫ってきたので「逃げるぞ!!」と叫んだ。
大海嘯を予測し、先に2人を逃がしておくべきだったと思った。が、今そんなことを考えても仕方ない。
坂道を上り高台まで来ると津波は届かなくなった。同じように避難してきた人が大勢いる。
3人は眼下の町を振り返り、息を飲む。漆黒の波が都を覆っている。つい先ほどまで人々の営みがなされていたのに、もはや跡形もない。
「どうしよう、シリウス」
ミラが不安そうに聞いた。
「決まっている。ポラリスを奉安しにいくぞ」
そう答えたとたん、また地震が起きた。余震にしては大きい。3人は近くの木につかまり、何とか持ちこたえた。
「急ぎましょう、シリウス!」
スピカに促され、3人はさらに北に向けて走った。