Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
第2章 シリウス編(後編)
若き守護者
大海嘯(だいかいしょう)から半年たったある日の夜――北の町の北辰の祠に、怪しい数人の人影が忍び寄っていた。
「あれか」
その人影たちは、月明かりのない中、そうっと祠に忍び寄る。星の大地に伝わる伝説の秘宝・ポラリス。それが今、目の前にあるのだ。
祠を見ると、特に鍵もかかっていない。簡単に盗めそうだ。
「よし、いいぞ」
人影の1人が手を伸ばした。その時――
「そこまでだ」
盗賊たちはハッとした。
「どこだ!? どこにいる!?」
辺りを見回す。すると、祠の影から鞭のような斬撃が繰り出されてきた。
「うおっ!」
盗賊たちは何とかかわす。しかし
「一の秘剣・魚釣り星!」
剣の切っ先が蛇のように次々に襲いかかってくる。数人が手足に大きな傷を負った。
「だ、誰だ!?」
盗賊の1人が叫ぶと、祠の後ろから男が現れた。いや、男というには若い――
「子供!?」
「ポラリスの守護戦士、紫微垣のシリウス。使命により、お前らを排除する」
次にシリウスは敵まで間合いを詰め、七星剣を槍に変形させた。
「三の秘剣・三連突き!」
横一列に3人が突きを食らう。急所は外しているがかなりのダメージだ。
すると今度は、シリウスの背後から1人が斬りかかってきた。
「小僧、調子に乗るなよ!」
「六の秘剣・釣り鐘星!」
七星剣がくの字に折れ曲がり、背後に飛び込んできた敵を斬り払った。これも急所は外しているが、腹部に痛手を負わせた。
「つ、強い…」
「これが紫微垣……」
敵の半分を戦闘不能にしたところで、シリウスは盗賊どもをにらんだ。
「けが人を回収してとっとと消えろ。ここはお前らが来ていいところじゃない」
敵たちはけが人を抱え、這々(ほうほう)の体で逃げていった。
翌日。学舎の授業が終わったミラとスピカが、シリウスのもとを訪ねてきた。
シリウスは今、修行地だった貪狼の祠がある岩場ではなく、武曲の祠の近くにある庵にいることが多い。岩場での修行がほとんど終わったので、実践を兼ねた修行をすることになった。そのため、北辰の祠に通じる道の途中に庵を構えている。
「シリウス、来たよー」
「今日もおつかれさま」
ミラは相変わらず陽気で、スピカは穏やかに微笑んでいる。大海嘯から半年たち、北の町の復興もだいぶ進んだ。学舎もすぐに再開した。
シリウスは学舎を退学したが、スピカはあと3カ月で卒業する。星の大地では、学舎を卒業した後は働くか、もしくはさらに進学するかである。スピカはすでに進学を決め、卒業を待つばかりで、ミラは進級する。
「お前ら今日はどうする? これから岩屋に行くけど……」
「一緒に行く!」
「もちろん」
3人で庵を出た。シリウスはミラとスピカに挟まれて歩きながら思った。
(この2人のおかげで、使命を果たせたんだよなあ)
外傷を治す天漢癒・顕の腕輪を使うミラ。精神や神経を癒やす天漢癒・潜の腕輪を使うスピカ。彼女らがいてくれたから、ポラリスを取り戻す使命を果たせた。感謝しかない。
それにしても――とシリウスは考える。
(2人とも、俺を慕ってくれているんだよな……)
恋愛に疎いシリウスでも気付いてきた。
ミラは幼なじみで、貧民街で一緒に育ってきた妹のような存在だ。だが思春期を迎えて、彼女のシリウスに対する感情は異性への特別なものに変わってきたのだ。
スピカとは最初、ポラリスのことでけんかをした。最悪の始まりだった。しかし、紫微垣としての使命に目覚めた辺りから彼女も態度が変わってきた。まあ、死にそうなところを助けたってのもあるのだろうが……。と言っても、寝付けない時に寝かしつけてくれたり、慟哭した時に背中をさすってくれたり、姉や母親のようなところもある。
どちらかを選ばなければならない……それが今のシリウスには、嬉しくも少し気が重かった。
「あれか」
その人影たちは、月明かりのない中、そうっと祠に忍び寄る。星の大地に伝わる伝説の秘宝・ポラリス。それが今、目の前にあるのだ。
祠を見ると、特に鍵もかかっていない。簡単に盗めそうだ。
「よし、いいぞ」
人影の1人が手を伸ばした。その時――
「そこまでだ」
盗賊たちはハッとした。
「どこだ!? どこにいる!?」
辺りを見回す。すると、祠の影から鞭のような斬撃が繰り出されてきた。
「うおっ!」
盗賊たちは何とかかわす。しかし
「一の秘剣・魚釣り星!」
剣の切っ先が蛇のように次々に襲いかかってくる。数人が手足に大きな傷を負った。
「だ、誰だ!?」
盗賊の1人が叫ぶと、祠の後ろから男が現れた。いや、男というには若い――
「子供!?」
「ポラリスの守護戦士、紫微垣のシリウス。使命により、お前らを排除する」
次にシリウスは敵まで間合いを詰め、七星剣を槍に変形させた。
「三の秘剣・三連突き!」
横一列に3人が突きを食らう。急所は外しているがかなりのダメージだ。
すると今度は、シリウスの背後から1人が斬りかかってきた。
「小僧、調子に乗るなよ!」
「六の秘剣・釣り鐘星!」
七星剣がくの字に折れ曲がり、背後に飛び込んできた敵を斬り払った。これも急所は外しているが、腹部に痛手を負わせた。
「つ、強い…」
「これが紫微垣……」
敵の半分を戦闘不能にしたところで、シリウスは盗賊どもをにらんだ。
「けが人を回収してとっとと消えろ。ここはお前らが来ていいところじゃない」
敵たちはけが人を抱え、這々(ほうほう)の体で逃げていった。
翌日。学舎の授業が終わったミラとスピカが、シリウスのもとを訪ねてきた。
シリウスは今、修行地だった貪狼の祠がある岩場ではなく、武曲の祠の近くにある庵にいることが多い。岩場での修行がほとんど終わったので、実践を兼ねた修行をすることになった。そのため、北辰の祠に通じる道の途中に庵を構えている。
「シリウス、来たよー」
「今日もおつかれさま」
ミラは相変わらず陽気で、スピカは穏やかに微笑んでいる。大海嘯から半年たち、北の町の復興もだいぶ進んだ。学舎もすぐに再開した。
シリウスは学舎を退学したが、スピカはあと3カ月で卒業する。星の大地では、学舎を卒業した後は働くか、もしくはさらに進学するかである。スピカはすでに進学を決め、卒業を待つばかりで、ミラは進級する。
「お前ら今日はどうする? これから岩屋に行くけど……」
「一緒に行く!」
「もちろん」
3人で庵を出た。シリウスはミラとスピカに挟まれて歩きながら思った。
(この2人のおかげで、使命を果たせたんだよなあ)
外傷を治す天漢癒・顕の腕輪を使うミラ。精神や神経を癒やす天漢癒・潜の腕輪を使うスピカ。彼女らがいてくれたから、ポラリスを取り戻す使命を果たせた。感謝しかない。
それにしても――とシリウスは考える。
(2人とも、俺を慕ってくれているんだよな……)
恋愛に疎いシリウスでも気付いてきた。
ミラは幼なじみで、貧民街で一緒に育ってきた妹のような存在だ。だが思春期を迎えて、彼女のシリウスに対する感情は異性への特別なものに変わってきたのだ。
スピカとは最初、ポラリスのことでけんかをした。最悪の始まりだった。しかし、紫微垣としての使命に目覚めた辺りから彼女も態度が変わってきた。まあ、死にそうなところを助けたってのもあるのだろうが……。と言っても、寝付けない時に寝かしつけてくれたり、慟哭した時に背中をさすってくれたり、姉や母親のようなところもある。
どちらかを選ばなければならない……それが今のシリウスには、嬉しくも少し気が重かった。