Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
二人の少女
岩場に着いたら、シリウスはアルクトゥルスに昨夜の任務を報告した。その後、夕食を作り、皆で食べる。
「今日は鬼鰹の竜田揚げだ」
「わあ、おいしそう!」
「こんなのも作れるのね……」
ミラもスピカも目をきらきらさせる。女の子はおいしいものを食べるのが好きなのだ。それにしても、こうして皆で食卓を囲むのも見慣れてきた。本当の家族のように……。
食事が終わると、ミラとスピカが片付けをしてくれる。シリウスはアルクトゥルスと外に出て話し始めた。
「師匠……ここのところ多いな」
「お前もそう思うか」
ポラリスを盗みに来る輩の数である。ベテルギウスとリゲルのように、思いつきでやってくる者もいるが、そういう輩は稀なのだ。そのため、紫微垣の任務は暇なことが多い。
しかし、昨日のように数人がかりで来るのは珍しい。もしかしたら組織的な犯行なのかもしれない。
「まあいいさ。どんな敵でも蹴散らすまでだ」
シリウスが七星剣を握りしめた。ベテルギウスたちのような失態はもうしない。
「ところでシリウス」
アルクトゥルスが話題を変える。
「お前は、ミラちゃんとスピカちゃん、どちらが好きなんだ?」
思わず七星剣を落とした。
「な、な、何を!?」
「あの子たちはお前を好いているが、どちらを選ぶんだ?」
何でいきなりそんなことを!? そもそも紫微垣が恋愛を語る必要はないだろう。
しかし、師匠は神妙な顔で言った。
「恋愛は家庭構築につながる。だから大切なのだ」
さらに続けた。歴代の紫微垣は家庭に恵まれなかった人が多い。初代からアルクトゥルスまでの紫微垣は4人。親の虐待がひどかった人、家族と死別した人などがいたらしい。
「使命も大事だが、お前も家庭を持って幸せになるといい」
「紫微垣のことと関係ないだろう」
顔を赤くするシリウスに向かい、アルクトゥルスは毅然として言った。
「あるさ。人の幸福を守る者は、自分自身も幸福でなければならない」
さらには、その幸福とは利己的なものではなく、全ての人や生命と共にあるものでなければならない。
「わしも息子が3人いるが、今は中つ都で働いている。子供が自立してくれたのはうれしいが、妻とはすでに死に別れた」
そんなこと初めて聞いた。そういえば、師匠の身の上話ってあまり聞いたことなかったな。
「そういうわけだ。一人前の紫微垣になった時は、家庭を築くといい」
片付けも終え、シリウスは2人の少女を家まで送ることにした。
岩場がある北の町の東からスピカの家がある町の中央へ、それからミラが住む西の貧民街に行く。これがいつものルートだ。
3人で半年前の大海嘯のこと、これからの進路のことを話しているうちにスピカの家に着いた。それから貧民街に向かおうとした時、ミラが焦り始めた。
「あれ? 家の鍵がない……」
今日、彼女の母親は夜に用事があるらしく、家に鍵がかかっているらしい。その鍵をかばんにいれていたはずだが、見つからない。
「かばんの内ポケットじゃないか?」
そうシリウスが言ってミラに近寄ろうとすると、スピカにくいっと袖を掴まれた。
「スピカ?」
「ミラはいつもシリウスと2人きりになる時間があってずるいわ。私にもちょっとだけ時間ちょうだい……」
そういうとスピカはシリウスに近寄り、シリウスの左頬にキスをした。
「おやすみ、シリウス」
艶やかな微笑みをすると、スピカは呆然とするシリウスを残し、そのまま家に入ってしまった。
(スピカ……?)
「あ、あった! あったよ、シリウス!」
ミラはかばんから鍵を見つけた。たった今、スピカがやったことは見ていないようだ。
「…どうしたの、シリウス? あれ、先輩は?」
「あ、ああ、もう家に入ったよ」
「ふーん、じゃあ行こっか」
2人で歩き始めた。やがて貧民街のミラの家に着いた。すると、今度はミラが家の鍵を開けながら、唐突なことを言った。
「…ねえ、今日うちに泊まっていかない?」
「な、何言っているんだ?」
俺はこれから自分の庵に戻ってポラリスを守らないといけないんだ。それに、もう幼少期とは違ってお互いに青年になろうとしている。男女のペアが泊まるなんてまずいだろう。そんなことを言うと、ミラは胸に飛び込んできた。
「お、おい!」
ミラは顔を上げると、無理矢理シリウスの唇に自分の唇を重ねる。
「――っ!」
舌を少し入れてきた。こんなこと初めてだ。
唇を離すと、ミラはシリウスから離れた。
「私、シリウスのこと大好きだから。おやすみっ」
そう言い残して家に入ってしまった。
――何なんだ今日は、スピカもミラも。
「今日は鬼鰹の竜田揚げだ」
「わあ、おいしそう!」
「こんなのも作れるのね……」
ミラもスピカも目をきらきらさせる。女の子はおいしいものを食べるのが好きなのだ。それにしても、こうして皆で食卓を囲むのも見慣れてきた。本当の家族のように……。
食事が終わると、ミラとスピカが片付けをしてくれる。シリウスはアルクトゥルスと外に出て話し始めた。
「師匠……ここのところ多いな」
「お前もそう思うか」
ポラリスを盗みに来る輩の数である。ベテルギウスとリゲルのように、思いつきでやってくる者もいるが、そういう輩は稀なのだ。そのため、紫微垣の任務は暇なことが多い。
しかし、昨日のように数人がかりで来るのは珍しい。もしかしたら組織的な犯行なのかもしれない。
「まあいいさ。どんな敵でも蹴散らすまでだ」
シリウスが七星剣を握りしめた。ベテルギウスたちのような失態はもうしない。
「ところでシリウス」
アルクトゥルスが話題を変える。
「お前は、ミラちゃんとスピカちゃん、どちらが好きなんだ?」
思わず七星剣を落とした。
「な、な、何を!?」
「あの子たちはお前を好いているが、どちらを選ぶんだ?」
何でいきなりそんなことを!? そもそも紫微垣が恋愛を語る必要はないだろう。
しかし、師匠は神妙な顔で言った。
「恋愛は家庭構築につながる。だから大切なのだ」
さらに続けた。歴代の紫微垣は家庭に恵まれなかった人が多い。初代からアルクトゥルスまでの紫微垣は4人。親の虐待がひどかった人、家族と死別した人などがいたらしい。
「使命も大事だが、お前も家庭を持って幸せになるといい」
「紫微垣のことと関係ないだろう」
顔を赤くするシリウスに向かい、アルクトゥルスは毅然として言った。
「あるさ。人の幸福を守る者は、自分自身も幸福でなければならない」
さらには、その幸福とは利己的なものではなく、全ての人や生命と共にあるものでなければならない。
「わしも息子が3人いるが、今は中つ都で働いている。子供が自立してくれたのはうれしいが、妻とはすでに死に別れた」
そんなこと初めて聞いた。そういえば、師匠の身の上話ってあまり聞いたことなかったな。
「そういうわけだ。一人前の紫微垣になった時は、家庭を築くといい」
片付けも終え、シリウスは2人の少女を家まで送ることにした。
岩場がある北の町の東からスピカの家がある町の中央へ、それからミラが住む西の貧民街に行く。これがいつものルートだ。
3人で半年前の大海嘯のこと、これからの進路のことを話しているうちにスピカの家に着いた。それから貧民街に向かおうとした時、ミラが焦り始めた。
「あれ? 家の鍵がない……」
今日、彼女の母親は夜に用事があるらしく、家に鍵がかかっているらしい。その鍵をかばんにいれていたはずだが、見つからない。
「かばんの内ポケットじゃないか?」
そうシリウスが言ってミラに近寄ろうとすると、スピカにくいっと袖を掴まれた。
「スピカ?」
「ミラはいつもシリウスと2人きりになる時間があってずるいわ。私にもちょっとだけ時間ちょうだい……」
そういうとスピカはシリウスに近寄り、シリウスの左頬にキスをした。
「おやすみ、シリウス」
艶やかな微笑みをすると、スピカは呆然とするシリウスを残し、そのまま家に入ってしまった。
(スピカ……?)
「あ、あった! あったよ、シリウス!」
ミラはかばんから鍵を見つけた。たった今、スピカがやったことは見ていないようだ。
「…どうしたの、シリウス? あれ、先輩は?」
「あ、ああ、もう家に入ったよ」
「ふーん、じゃあ行こっか」
2人で歩き始めた。やがて貧民街のミラの家に着いた。すると、今度はミラが家の鍵を開けながら、唐突なことを言った。
「…ねえ、今日うちに泊まっていかない?」
「な、何言っているんだ?」
俺はこれから自分の庵に戻ってポラリスを守らないといけないんだ。それに、もう幼少期とは違ってお互いに青年になろうとしている。男女のペアが泊まるなんてまずいだろう。そんなことを言うと、ミラは胸に飛び込んできた。
「お、おい!」
ミラは顔を上げると、無理矢理シリウスの唇に自分の唇を重ねる。
「――っ!」
舌を少し入れてきた。こんなこと初めてだ。
唇を離すと、ミラはシリウスから離れた。
「私、シリウスのこと大好きだから。おやすみっ」
そう言い残して家に入ってしまった。
――何なんだ今日は、スピカもミラも。