Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
アルクトゥルスの最期
目を眩ませるほどの光が放たれてから数秒、シリウスたちが目を開ける。
「あ、ああ…」
ミラが震える指で指すその先には……
「師匠!!」
右肩にコラプサーの刀身がのめり込んだアルクトゥルスの姿があった。しかも、七星剣は七つの星鏡がすべて砕け散り、金属部分はボロボロにひび割れしている。しかし、コラプサーも刀身の真ん中辺りで折れていた。
「あ、相打ち……」
スピカが声を震わせる。アルクトゥルスは捨て身の攻撃で、コラプサーを折ったのだ。
「ちっ……」
アルタイルはとっさに後ろに飛び退き、折れたコラプサーを鞘に収める。アルクトゥルスにめりこんだ切っ先側の刀身が蒸発した。
「命と引き替えに折るとはな…」
「首領、一度退きましょう。またチャンスはありますから」
ベガがアルタイルに言うと
「ふん」
と鼻を鳴らして去って行った。
「師匠!!」
ようやく回復が終わり、シリウスはアルクトゥルスのもとに駆け寄った。その途端、ひびが入った七星剣が突然粉々に砕け散る。大海嘯を止めるために共に戦い、紫微垣の使命を遂行するために力を貸してくれた剣の最期だった。
しかし、それよりも師の体は……。
「ミラ、腕輪貸せ!」
「え?」
「早く!!」
ミラから天漢癒の腕輪をひったくると、シリウスは自分の腕にはめて治癒を始める。しかし、一向に回復しない。
「何でだよ、何で回復しない!」
「ばか者…」
かすれるような声を出すアルクトゥルス。
「教えただろうが……ここまでの…致命傷は…天漢癒で治らん…」
師はうっすらと目を開けた。天漢癒は、時間が経てば治るけがや傷を治癒する術だ。人体破壊や致命傷は治せない。
しかしシリウスは、それでもやらずにはいられなかった。懸命に治癒を試みる。
「もういい……シリウス…」
息が絶え絶えのアルクトゥルスだが、最後の気力を振り絞って話し始めた。
「お前…にはまだ教える…ことがあった…もう…わしから直接は無理…だ…庵の本棚に…わしの日記や…紫微垣の資料…がある…あの男を止めろ…」
「アルクトゥルスさん、もうやめて! しゃべったら…」
スピカが叫んだ。が、誰がどう見ても、もう助からない。
「シリウス…よくここまで成長…した…本当の紫微垣に…なれ…」
それが師匠の最後の言葉だった。
「師匠、師匠!! あああああああああ!!!」
シリウスの慟哭が、夜空に響き渡った。
それからシリウスは一晩じゅう泣いた。師を助けられなかった自分の無力さを呪わんばかりの叫びだった。
翌日、北の町の役場からアルクトゥルスの亡骸を引き取りに役人たちが来た。亡骸は血のりなどが拭かれ、棺に入れられた。この町では、紫微垣が亡くなると町が盛大な葬儀をしてくれることになっている。アルクトゥルスも例にもれず、町じゅうの人が集まって弔われることになった。
名士――スピカの父親が弔辞を読む最中、シリウスは師の最後の言葉を反芻していた。
――よくぞここまで成長した 本当の紫微垣になれ――
「紫微垣様が亡くなってしまったら、私たちはどうしたらいいのかしら?」
葬儀に参列していた年配の女性たちの会話が聞こえてきた。
(俺がやらなければ……)
シリウスは、この日を境にもう悲しむことをやめるつもりだった。アルタイルたちは、いずれまたポラリスを狙いに来るだろう。その時に備えなければいけない。
葬儀、火葬が終わり、遺骨は町の墓地に納められた。シリウスたち3人は、名残惜しそうにする人々の輪から抜け出し、修行地へ向かった。折れた七星剣、アルタイルのこと、魔剣・コラプサー、八番目の秘剣――それらの謎を一刻も早く突きとめるために。
「あ、ああ…」
ミラが震える指で指すその先には……
「師匠!!」
右肩にコラプサーの刀身がのめり込んだアルクトゥルスの姿があった。しかも、七星剣は七つの星鏡がすべて砕け散り、金属部分はボロボロにひび割れしている。しかし、コラプサーも刀身の真ん中辺りで折れていた。
「あ、相打ち……」
スピカが声を震わせる。アルクトゥルスは捨て身の攻撃で、コラプサーを折ったのだ。
「ちっ……」
アルタイルはとっさに後ろに飛び退き、折れたコラプサーを鞘に収める。アルクトゥルスにめりこんだ切っ先側の刀身が蒸発した。
「命と引き替えに折るとはな…」
「首領、一度退きましょう。またチャンスはありますから」
ベガがアルタイルに言うと
「ふん」
と鼻を鳴らして去って行った。
「師匠!!」
ようやく回復が終わり、シリウスはアルクトゥルスのもとに駆け寄った。その途端、ひびが入った七星剣が突然粉々に砕け散る。大海嘯を止めるために共に戦い、紫微垣の使命を遂行するために力を貸してくれた剣の最期だった。
しかし、それよりも師の体は……。
「ミラ、腕輪貸せ!」
「え?」
「早く!!」
ミラから天漢癒の腕輪をひったくると、シリウスは自分の腕にはめて治癒を始める。しかし、一向に回復しない。
「何でだよ、何で回復しない!」
「ばか者…」
かすれるような声を出すアルクトゥルス。
「教えただろうが……ここまでの…致命傷は…天漢癒で治らん…」
師はうっすらと目を開けた。天漢癒は、時間が経てば治るけがや傷を治癒する術だ。人体破壊や致命傷は治せない。
しかしシリウスは、それでもやらずにはいられなかった。懸命に治癒を試みる。
「もういい……シリウス…」
息が絶え絶えのアルクトゥルスだが、最後の気力を振り絞って話し始めた。
「お前…にはまだ教える…ことがあった…もう…わしから直接は無理…だ…庵の本棚に…わしの日記や…紫微垣の資料…がある…あの男を止めろ…」
「アルクトゥルスさん、もうやめて! しゃべったら…」
スピカが叫んだ。が、誰がどう見ても、もう助からない。
「シリウス…よくここまで成長…した…本当の紫微垣に…なれ…」
それが師匠の最後の言葉だった。
「師匠、師匠!! あああああああああ!!!」
シリウスの慟哭が、夜空に響き渡った。
それからシリウスは一晩じゅう泣いた。師を助けられなかった自分の無力さを呪わんばかりの叫びだった。
翌日、北の町の役場からアルクトゥルスの亡骸を引き取りに役人たちが来た。亡骸は血のりなどが拭かれ、棺に入れられた。この町では、紫微垣が亡くなると町が盛大な葬儀をしてくれることになっている。アルクトゥルスも例にもれず、町じゅうの人が集まって弔われることになった。
名士――スピカの父親が弔辞を読む最中、シリウスは師の最後の言葉を反芻していた。
――よくぞここまで成長した 本当の紫微垣になれ――
「紫微垣様が亡くなってしまったら、私たちはどうしたらいいのかしら?」
葬儀に参列していた年配の女性たちの会話が聞こえてきた。
(俺がやらなければ……)
シリウスは、この日を境にもう悲しむことをやめるつもりだった。アルタイルたちは、いずれまたポラリスを狙いに来るだろう。その時に備えなければいけない。
葬儀、火葬が終わり、遺骨は町の墓地に納められた。シリウスたち3人は、名残惜しそうにする人々の輪から抜け出し、修行地へ向かった。折れた七星剣、アルタイルのこと、魔剣・コラプサー、八番目の秘剣――それらの謎を一刻も早く突きとめるために。