Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
スピカの発案
3人はアルクトゥルスの庵に入り、本棚を探した。そこに彼の日記や紫微垣に関する資料があるとのことだ。
「でも、そんな本棚あったっけ?」
ミラが首を傾げる。いつも居間で食事をしているが、それらしいものは見たことがない。他の部屋にあるのだろうか? しかし、庵には居間のほかはキッチンと寝室しかなかった。
「一体どこにあるんだ?」
ミラとシリウスが途方に暮れていると、スピカが何かに気付いたように、床にしゃがんで調べ始めた。
「スピカ、どうした?」
「もしかしたら……」
スピカが目線を低くしてきょろきょろしていると、ふと床から1本の縄が出ているのを見つけた。その周囲には畳一畳分の不自然な区切りがある。その縄を引っ張ってみると、ゴウンという音を立てて床の扉が開いた。
「地下の隠し倉庫か!」
よく見つけたなあとシリウスは感心する。
「たぶん、アルクトゥルスさんは長く保管するためにここに隠したのよ」
地上にあると、自然災害や火事で庵が壊れた時に紛失してしまうだろう。また、盗みに入られる可能性もある。紫微垣の系譜を絶やさないための工夫だったのだろう。
2メートルほどの階段を降りるとけっこう広い空間だった。薄暗い中、目を凝らすと天井まで届くタイプの本棚が四つあるのが見えた。
「これ、全部調べるの?」
「あ、ああ……」
ミラとシリウスは言葉を失っている。読書家の書斎の一画ほどの量と言えばよいだろう。それなりの本の量だが、難儀するほどではない。
しかし、アルタイルたちの次の襲撃がいつになるか分からない状況で、これを一冊一冊調べるのは手間だった。そもそも、シリウスとミラには本を読む習慣がないのだ。
「どうしよう、シリウス」
「どうって……片っ端から調べていくしかないだろう」
シリウスは一番端の本棚の、下の左端の本を取り出そうとした。
「待って、シリウス」
スピカがシリウスの手を捕まえて制止する。
「それじゃ効率が悪すぎるわ。ここは、調べるテーマを決めてから取りかかった方がいいわよ」
「調べるテーマ?」
3人は一旦、居間に戻り、寝室にあった大きめの紙を2枚持ってきた。スピカは1枚目に〈紫微垣〉と書き、もう1枚には〈盗賊〉と書いた。
「いい、2人とも? 自由研究をやった時を思い出して。闇雲に調べ始めるんじゃなくて、最初は『何を調べるか?』を明確にすること。そうしないと調べ事がぶれて進まなくなるわ」
さすがはスピカ、理路整然と説明してくる。学舎トップクラスの学力は伊達じゃなかった。ちなみにミラとシリウスは脳内で自由研究を振り返ったが、ミラはどうしていいか分からずに趣味の貝殻を適当に集めて提出することでお茶をにごし、シリウスは堂々と未提出にした。
「今、知らなければならないことは、一つは紫微垣のこと。ここには、例えば七星剣の作り方を書くの。他には秘剣のこととか……」
「あ、そういえば八の秘剣!」
ミラが声を上げた。アルクトゥルスが最後に発動させた秘剣を思い出した。
「あの八の秘剣についても調べなければいけないわね。あとは歴代の紫微垣のことかしら?」
「それも調べるのか?」
「何かヒントがあるかもしれないから。でも優先順位は低くていいわ」
〈紫微垣〉の紙に、①七星剣 ②八の秘剣 ③歴代の紫微垣、と書いた。この優先順位で調べるということだ。
「次は盗賊。あのアルタイルって男、アルクトゥルスさんの元弟子だったんでしょ? だったら、日記に何か残っているかも」
「先輩、あの怖い剣も何かあるのかな?」
「分からない。ただ、アルクトゥルスさんは何か知っているような素振りだったから……」
そう呟きながら、〈盗賊〉の紙には①アルタイル ②魔剣コラプサーと書いた。
「ざっとこれで良いかしら? あとは、この項目に合う本を探して調べていきましょう」
「でも、そんな本棚あったっけ?」
ミラが首を傾げる。いつも居間で食事をしているが、それらしいものは見たことがない。他の部屋にあるのだろうか? しかし、庵には居間のほかはキッチンと寝室しかなかった。
「一体どこにあるんだ?」
ミラとシリウスが途方に暮れていると、スピカが何かに気付いたように、床にしゃがんで調べ始めた。
「スピカ、どうした?」
「もしかしたら……」
スピカが目線を低くしてきょろきょろしていると、ふと床から1本の縄が出ているのを見つけた。その周囲には畳一畳分の不自然な区切りがある。その縄を引っ張ってみると、ゴウンという音を立てて床の扉が開いた。
「地下の隠し倉庫か!」
よく見つけたなあとシリウスは感心する。
「たぶん、アルクトゥルスさんは長く保管するためにここに隠したのよ」
地上にあると、自然災害や火事で庵が壊れた時に紛失してしまうだろう。また、盗みに入られる可能性もある。紫微垣の系譜を絶やさないための工夫だったのだろう。
2メートルほどの階段を降りるとけっこう広い空間だった。薄暗い中、目を凝らすと天井まで届くタイプの本棚が四つあるのが見えた。
「これ、全部調べるの?」
「あ、ああ……」
ミラとシリウスは言葉を失っている。読書家の書斎の一画ほどの量と言えばよいだろう。それなりの本の量だが、難儀するほどではない。
しかし、アルタイルたちの次の襲撃がいつになるか分からない状況で、これを一冊一冊調べるのは手間だった。そもそも、シリウスとミラには本を読む習慣がないのだ。
「どうしよう、シリウス」
「どうって……片っ端から調べていくしかないだろう」
シリウスは一番端の本棚の、下の左端の本を取り出そうとした。
「待って、シリウス」
スピカがシリウスの手を捕まえて制止する。
「それじゃ効率が悪すぎるわ。ここは、調べるテーマを決めてから取りかかった方がいいわよ」
「調べるテーマ?」
3人は一旦、居間に戻り、寝室にあった大きめの紙を2枚持ってきた。スピカは1枚目に〈紫微垣〉と書き、もう1枚には〈盗賊〉と書いた。
「いい、2人とも? 自由研究をやった時を思い出して。闇雲に調べ始めるんじゃなくて、最初は『何を調べるか?』を明確にすること。そうしないと調べ事がぶれて進まなくなるわ」
さすがはスピカ、理路整然と説明してくる。学舎トップクラスの学力は伊達じゃなかった。ちなみにミラとシリウスは脳内で自由研究を振り返ったが、ミラはどうしていいか分からずに趣味の貝殻を適当に集めて提出することでお茶をにごし、シリウスは堂々と未提出にした。
「今、知らなければならないことは、一つは紫微垣のこと。ここには、例えば七星剣の作り方を書くの。他には秘剣のこととか……」
「あ、そういえば八の秘剣!」
ミラが声を上げた。アルクトゥルスが最後に発動させた秘剣を思い出した。
「あの八の秘剣についても調べなければいけないわね。あとは歴代の紫微垣のことかしら?」
「それも調べるのか?」
「何かヒントがあるかもしれないから。でも優先順位は低くていいわ」
〈紫微垣〉の紙に、①七星剣 ②八の秘剣 ③歴代の紫微垣、と書いた。この優先順位で調べるということだ。
「次は盗賊。あのアルタイルって男、アルクトゥルスさんの元弟子だったんでしょ? だったら、日記に何か残っているかも」
「先輩、あの怖い剣も何かあるのかな?」
「分からない。ただ、アルクトゥルスさんは何か知っているような素振りだったから……」
そう呟きながら、〈盗賊〉の紙には①アルタイル ②魔剣コラプサーと書いた。
「ざっとこれで良いかしら? あとは、この項目に合う本を探して調べていきましょう」