Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

紫微垣の試練③――禄存(ろくそん)の祠

 北の町の墓地。その奥に歴代の紫微垣の墓がある。ついこの間、四代目紫微垣・アルクトゥルスが葬られたばかりだ。禄存の祠は紫微垣の墓標でもある。
 自分も紫微垣になってから死ねば、ここに葬られるのだろうか? そんなことを考えながら墓碑を見ると、

一代目 アルコル
二代目 フォマルハウト
三代目 
四代目 アルクトゥルス

 と刻まれている。二代目と四代目の間に三代目と刻まれているが、カノープスが存命なのでまだその名前がない。
 3人はまず墓にお参りをする。
(師匠……)
 葬儀の日を最後に悲しみは封じる。そう決めた。それなのに、祠を前にすると目頭が熱くなってくる。
 そんなシリウスの様子に気付いたスピカは、彼の背中を優しく撫でた。目が合うと、慈愛に満ちた微笑みを向けてくる。
 ――悲しみを押し込めないで。泣いてもいいのよ。
 そんな表情だった。が、決意は決意だ。シリウスは目の涙を吹き払う。そのとたんに、
グウ……とシリウスのおなかが鳴った。もう昼である。
 先ほどまでのしんみり感はどこへやら。3人は吹き出して笑い出した。
「もうやだーシリウスったらー」
「アルクトゥルスさんにまた怒られるよー?」
「違いない」
 とりあえず腹ごしらえだ。脇にあるベンチに座り、カノープスが持たせてくれた弁当を広げる。
「わあ、おいしそう!」
 ミラが叫んだ。じゃこのふりかけを海苔で包んだおにぎり、卵焼きや魚の竜田揚げ、漬け物が入っている。早速「いただきまーす!」とおにぎりにかぶりついた。
「元気だなあ、ミラは」
「私たちも食べましょうか」
 スピカに促され、シリウスも食べ始めた。うまい。おにぎりはじゃこだけではなく、紫蘇も交じっている。あっという間に一つ目を食べ、二つ目に手を伸ばそうとした。しかしその時――

 ビュッ

 という音と共に何かがシリウスに飛んできた。
「うわっ!」
 とっさに反応してかわしたが、弁当を地面に落としてしまった。
「シリウス、大丈夫!?」
 スピカが心配そうに聞く。
「敵がいる、気をつけろ!」
 七星剣を構える。しかし、辺りから敵らしい殺気を感じない。どういうことだ?
 シリウスはしばらく構えを解かずに気配をうかがっていたが――
《ここだよ》
 祠の方から声がして慌てて振り向いた。そこには、壮年の男性の姿があった。年は40代前半くらいだろうか。
「誰だ、お前は!!」
 怒鳴ってからふと、相手の足元を見た。足が……ない? しかも、体が透けて向こう側が見える。これってもしかして……。
「ゆ、幽霊!?」
「きゃあああ!」
 少女2人が叫ぶ。東の都の「昴の祠」もそうだったが、ここも幽霊が出るのか!?
《落ち着きなさい。幽霊だけど怖くはない。今は昼だぞ、成仏できない霊は夜に出るのが相場だろうが》
 それもそうかと妙に納得して、相手に向き直った。
「あ、あんた誰だ?」
《私は君の師の師の、そのまた師だ》
 つまり、アルクトゥルスの師匠であるカノープスの師匠……
「二代目の紫微垣?」
《いかにも。紫微垣・フォマルハウトだ》
 目の前にいる霊体は、ふわふわしながらけろりと言った。
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