Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

紫微垣の試練④――フォマルハウト

《君、紫微垣の候補者だな。霊界でアルクトゥルスから聞いたぞ》
 師匠は、霊界で確かに存在しているようだ。
《さて、この祠の試練は私が担当だ。あの祠の中に来てもらおう》
《え、どうやって?》
 神社の社や寺の伽藍とは違って祠は小さい。その中にどうやって入るのか?
《祠の前に立っていなさい》
 フォマルハウトはシリウスにそう促し、まずは自分が祠に消えていった。
「大丈夫かしら?」
 スピカが不安そうにつぶやく。
「大丈夫じゃなくても行くしかないさ」
 シリウスは肚を決めて祠の前に立った。すると、その体が祠に吸い込まれた。
「え!?」
「シリウスー!!」

――ここはどこだ?
 目が覚めたシリウスがいたのは、宇宙のような空間だった。漆黒が広がる中、ところどころに星や銀河のような光景がある。
 フォマルハウトは、少し離れたところに立っていた。先ほどのような霊体ではなく、足もあるし体も透けていない。
「お目覚めか。さて、始めるとしようか」
 フォマルハウトは七星剣を取り出した。星鏡はえんじ色である。
「言っておくが手合わせをするのとは違う。シリウス、君が先に得意な秘剣を繰り出したら、私が八の秘剣を繰り出す。君はそれを防ぐかかわすかしろ。それが試練だ」
「ということは、秘剣を受けるということか?」
 アルクトゥルスに一から七の秘剣を教えてもらう時、いくつかは自分で受けたものがある。かなり痛かったが、どうにか堪えた。
 今度は奥義を受けろと……。不安そうな表情を読み取ったのか、フォマルハウトが明るく言った。
「大丈夫だ。死にはせん。ただ、精神がズタズタにされて数カ月寝込むことはありうる」
 アルクトゥルスといい、なぜ紫微垣には恐ろしいことを飄々と言う人間がいるのだろう? しかし、ためらっていても埒が開かない。時間が差し迫っているため、数カ月間寝込むのは勘弁してほしいが……。
「じゃあ、早速いくぜ」
 シリウスは七星剣を構えた。繰り出す技は決まっていた。
「一の秘剣・魚釣り星!」
 鞭状に変形した剣がしなり、フォマルハウトに向かっていく。スピカとミラを助けようとした時に習得した技で、初めて使えた秘剣だ。以来、その汎用性を活かして攻撃、防御の時に愛用している。
「ほう、基本がしっかりできている。アルクトゥルスはよい指導をしたな」
 フォマルハウトは襲いかかってくるシリウスの剣を見ながら、自らの技を発動させた。
「八の秘剣・北落師門!」
 フォマルハウトの剣の星鏡が外れ、シリウスの周りに落ちた。ちょうど南の魚座の星図を象る。次の瞬間、星鏡が縦に光を放ち、シリウスの周囲に光の壁があらわれた。
 直後、シリウスの魚釣り星は光の壁に跳ね返り、シリウスに向かってきた。
「うわっ!」
 紙一重でかわしたが、さらに跳ね返って襲いかかってくる。
(なんて技だ!)
 と思った瞬間、右のふくらはぎに何かが刺さった。
「っ!!」
 声すら上げられない。見ると、赤く光った大きな刀身のようなものだ。ふと周りを見ると、それが光の壁や地面から棘のように無数に生え、こちらに飛んできた。
「マジかよ!!」
 次々にかわすが両腕両脚と腹に突き刺さった。その攻撃を十秒間受け、光の壁と赤い棘が消えた。
「これが…北落師門……」
 うずくまるシリウス。そこにフォマルハウトが近寄った。
「生きているな、よし。この試練は合格だ」
 ほっとしつつも呆れた。何て恐ろしい試練だ……。
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