Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
紫微垣の試練⑥――諍い
出口まで戻り、3人は作戦会議をする。
「狼や鮫のような、強力な敵を倒す試練とは違うわね」
スピカが冷静に分析する。
「どうすっかな……」
「シリウス、秘剣で蹴散らせないかな?」
ミラがシリウスに提案する。
「いや、地面を埋め尽くす量のさそりだったからな。魚釣り星でも螺旋昴でも、全部を蹴散らすことは不可能だろう」
眉間にしわを寄せるシリウス。こういう時は……と、スピカをちらりと見やる。
「シリウス、文綾(あや)の星はどうかしら?」
スピカからの意外な提案に驚くが、彼女は続けた。
七の秘剣・文綾の星は、自分の前に空気の渦を作って敵の飛び道具を防ぐ技だ。それを応用し、さそりを押しのけていくのだという。
「なるほど、自分を守りながら突破するのか。やってみる、ありがとう」
そう言ってシリウスは立ち上がった。スピカの顔にはまた優越感が浮かぶ。
(ふふふ、こういうことなら役に立てるのよね)
天漢癒の秘術ではミラの出番がどうしても多い。が、参謀的な役割ならスピカの方が得意である。
「ここは俺1人で行ってくる。お前らを守りながらは難しいからな」
「気を付けてね」
スピカが言うと、シリウスは再び穴に飛び込んだ。
「じゃあ、私たちはここで待ちましょうか」
「はーい」
スピカとミラは祠の横で、シリウスを待つことにした。
「…せっかくうちが近いし、何かお菓子でも持ってくるわ」
「やったあ!」
スピカの提案にミラがはしゃぐ。スピカは、家に入って使用人からまんじゅうとお茶をもらって持ってきた。しかし、戻ってきた彼女は異変に気付いた。
「……ミラ? どこ?」
時間は少し遡る。シリウスは祠の洞窟に入り、さそりがいる通路の前にいた。自分の足場とさそり通路には1メートルの段差があるため、さそりたちは容易には来ない。彼は剣の柄を上に構えた。
「七の秘剣・文綾の星!」
空気の渦ができる。習得した当初はほんの一瞬だけしか発動しなかったが、今では10秒は続けられる。通路は50メートルほどで、行き止まりに鏡の玉がめり込んであるのが見えた。あれを取ってくればよいのだ。
通路に降り立ち、シリウスは一気に駆け出す。さそりたちが群がってくるが、空気の渦がはじき飛ばしていく。10秒であっという間に星鏡のところに来た。
「ん?」
よく見ると星鏡は炭に埋まっていて、すぐには取れなさそうだった。シリウスは、星鏡の周りにある炭ごとえぐりとった。帰り道は五の秘剣・錨星で壁に投錨しようかと考えた。その矢先――
「シリウスー!」
聞き覚えのあるあどけない声――。
「ミラ!?」
「どこにいるのー?」
「お前、上で待っていろって言ったろうが!!」
「あ、そっちか」
ミラはたいまつを持っていないので足元が見えていない。入り口の足場から警戒なしに進み、段差を踏み外した。
「きゃっ!!」
「ミラ!!」
このままではさそりが群がってくる。シリウスは落ちるミラの横めがけて、錨星を放った。ひょう、という音とともに錨が刺さり、シリウスの体を持っていく。落下するミラを下で受け止めるのに間に合った。そこまでは良かったが……。
「いてっ!!!」
シリウスの足に激痛が走る。さそりに刺された。
「シリウス!!」
「上にあがるぞ!!」
ミラはシリウスに抱きつく。シリウスは刺されていない足で踏み切り、入り口の足場まで飛んだ。受け身に失敗したものの、そのまま地上に脱出した。
外に出たシリウスは、すぐに刺された足のくつを脱ぐ。青紫に腫れ上がっていた。シリウスは腫れに気を取られているのか、七星剣がミラに巻き付いたままであることに気付いていない。
「ちょっ、2人ともどうしたのよ!?」
スピカの言葉をよそに、ミラが天漢癒で治療し始めた。みるみるうちに腫れがひいていく。
「はあ、よかったあ」
完治してほっとするミラに、スピカが詰め寄る。
「どういうこと? 説明してくれない?」
美しい表情が険しくなっている。
「ごめんなさい…シリウスが心配で……」
スピカが家に入っている間に、洞窟の中に飛び込んだのだろうということは察しがついた。スピカは顔を真っ赤にして、ミラの肩を強くつかんだ。
「あなた、何考えているの!? ここはシリウスが1人で行くって言ったじゃない!!」
「うええん、ごめんなさあああい!!」
「狼や鮫のような、強力な敵を倒す試練とは違うわね」
スピカが冷静に分析する。
「どうすっかな……」
「シリウス、秘剣で蹴散らせないかな?」
ミラがシリウスに提案する。
「いや、地面を埋め尽くす量のさそりだったからな。魚釣り星でも螺旋昴でも、全部を蹴散らすことは不可能だろう」
眉間にしわを寄せるシリウス。こういう時は……と、スピカをちらりと見やる。
「シリウス、文綾(あや)の星はどうかしら?」
スピカからの意外な提案に驚くが、彼女は続けた。
七の秘剣・文綾の星は、自分の前に空気の渦を作って敵の飛び道具を防ぐ技だ。それを応用し、さそりを押しのけていくのだという。
「なるほど、自分を守りながら突破するのか。やってみる、ありがとう」
そう言ってシリウスは立ち上がった。スピカの顔にはまた優越感が浮かぶ。
(ふふふ、こういうことなら役に立てるのよね)
天漢癒の秘術ではミラの出番がどうしても多い。が、参謀的な役割ならスピカの方が得意である。
「ここは俺1人で行ってくる。お前らを守りながらは難しいからな」
「気を付けてね」
スピカが言うと、シリウスは再び穴に飛び込んだ。
「じゃあ、私たちはここで待ちましょうか」
「はーい」
スピカとミラは祠の横で、シリウスを待つことにした。
「…せっかくうちが近いし、何かお菓子でも持ってくるわ」
「やったあ!」
スピカの提案にミラがはしゃぐ。スピカは、家に入って使用人からまんじゅうとお茶をもらって持ってきた。しかし、戻ってきた彼女は異変に気付いた。
「……ミラ? どこ?」
時間は少し遡る。シリウスは祠の洞窟に入り、さそりがいる通路の前にいた。自分の足場とさそり通路には1メートルの段差があるため、さそりたちは容易には来ない。彼は剣の柄を上に構えた。
「七の秘剣・文綾の星!」
空気の渦ができる。習得した当初はほんの一瞬だけしか発動しなかったが、今では10秒は続けられる。通路は50メートルほどで、行き止まりに鏡の玉がめり込んであるのが見えた。あれを取ってくればよいのだ。
通路に降り立ち、シリウスは一気に駆け出す。さそりたちが群がってくるが、空気の渦がはじき飛ばしていく。10秒であっという間に星鏡のところに来た。
「ん?」
よく見ると星鏡は炭に埋まっていて、すぐには取れなさそうだった。シリウスは、星鏡の周りにある炭ごとえぐりとった。帰り道は五の秘剣・錨星で壁に投錨しようかと考えた。その矢先――
「シリウスー!」
聞き覚えのあるあどけない声――。
「ミラ!?」
「どこにいるのー?」
「お前、上で待っていろって言ったろうが!!」
「あ、そっちか」
ミラはたいまつを持っていないので足元が見えていない。入り口の足場から警戒なしに進み、段差を踏み外した。
「きゃっ!!」
「ミラ!!」
このままではさそりが群がってくる。シリウスは落ちるミラの横めがけて、錨星を放った。ひょう、という音とともに錨が刺さり、シリウスの体を持っていく。落下するミラを下で受け止めるのに間に合った。そこまでは良かったが……。
「いてっ!!!」
シリウスの足に激痛が走る。さそりに刺された。
「シリウス!!」
「上にあがるぞ!!」
ミラはシリウスに抱きつく。シリウスは刺されていない足で踏み切り、入り口の足場まで飛んだ。受け身に失敗したものの、そのまま地上に脱出した。
外に出たシリウスは、すぐに刺された足のくつを脱ぐ。青紫に腫れ上がっていた。シリウスは腫れに気を取られているのか、七星剣がミラに巻き付いたままであることに気付いていない。
「ちょっ、2人ともどうしたのよ!?」
スピカの言葉をよそに、ミラが天漢癒で治療し始めた。みるみるうちに腫れがひいていく。
「はあ、よかったあ」
完治してほっとするミラに、スピカが詰め寄る。
「どういうこと? 説明してくれない?」
美しい表情が険しくなっている。
「ごめんなさい…シリウスが心配で……」
スピカが家に入っている間に、洞窟の中に飛び込んだのだろうということは察しがついた。スピカは顔を真っ赤にして、ミラの肩を強くつかんだ。
「あなた、何考えているの!? ここはシリウスが1人で行くって言ったじゃない!!」
「うええん、ごめんなさあああい!!」