Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
紫微垣の試練⓼――兼貞(けんてい)の祠
結局、孫娘さんが出てきてカノープスをなだめた。部屋に通された3人は、お茶をいただいている。
「おじいさんは、若い頃に食事係をしていたので食べ物にうるさいんですの。うかつに落としたりこぼしたりしただけでも激怒しますから。残すなんてもってのほかで、私も厳しくしつけられましたわ」
にこにこ笑顔で語るが、その横にいるカノープスはまだふてくされている。
「とりあえず、文曲の祠まで回りました」
スピカが入手した星鏡とその他のアイテムを見せた。兼貞の祠はちょうど折り返し地点で、時刻が3時であることから、1日の行程の半分を消化したことになる。
「ところで、ここでもクリスタルがもらえるんですよね」
スピカが尋ねる。
「ええ。クリスタルと試練に関する本が入手できます。がんばってくださいね」
「で、何をすればいいんだ?」
すると孫娘さんは答えた。
「1時間の瞑想です」
「瞑想?」
「ええ、両手を合掌して正座する。それを1時間していただきます」
にこやかに返す。紫微垣の修行の時に瞑想はやっている。が、30分が限界であった。しかもシリウスは瞑想が苦手で、20分過ぎた頃に姿勢が崩れたり居眠りしたりすることが多かった。そこにアルクトゥルスの喝が飛んできて「やり直し!」となることが定例化していた。
「…大丈夫、シリウス?」
ミラもスピカも心配そうにシリウスをうかがう。彼女らはシリウスの修行をよく見てきたから、苦手であることを知っているのだ。
「…やるしかないだろう」
シリウスは観念したかのように立ち上がった。
「どこでやればいいんだ?」
孫娘さんは別の部屋に通してくれた。
そこはふすまが開け放している部屋で、外に兼貞の祠が見える。部屋から祠に向かって祈るということか。
早速、シリウスは正座して手を合わせる。そして目を瞑り、瞑想を始めた。
――それから1時間。皆別室にいたが
「そろそろいいかしら?」
というスピカの一言で立ち上がる。シリウスが瞑想している部屋に行ってみると……
「シリウス……」
1時間前と変わらぬ姿勢で瞑想をしていたのだ。ミラが前に回り込んで見てみても、姿勢も表情も崩れていない。
「素晴らしいですね。合格です」
「やったね、シリウス!」
ミラが抱きつく。その瞬間、シリウスが真横に倒れ込んだ。
「ちょっ、シリウス!?」
「きゃあっ、どうしたの!?」
スピカとミラが叫ぶ。それに答えるようにシリウスは声を振り絞った。
「…ない」
「え?」
「足がしびれて、立てない……」
「まあ、際どかったが合格でよかろう」
カノープスが目を細めて言った。シリウスはというと、まだ足がしびれているようであぐらになって足をもんでいる。カノープス曰く「こんなに瞑想が苦手な候補生は初めて」とのことだ。
「どうじゃった、1時間の瞑想は?」
「ああ、始めは雑念が多かったけど、段々なくなっていった。何かに包み込まれているような……」
するとカノープスはあごをなでながら言った。
「その感触、忘れるな。紫微垣になった時、心が乱れても誰も助けてはくれん。助けられるのはお前自身じゃからな」
心が乱れることを止めることはできない。が、乱れた後に整えることはできる――それを会得することが、大きな目的だった。
「さて、それでは……」
と、孫娘さんが二つのものを出してくれた。一つは星鏡、もう一つは本だった。
「この本は、最後の破軍の祠で使うことになります。持って行ってください。あと、使い終わったら返してくださいね」
紫微垣になる人のためにずっと保管しておくという。このような人たちの力を借りて、紫微垣は継承されてきたと今更ながらに思った。
「おじいさんは、若い頃に食事係をしていたので食べ物にうるさいんですの。うかつに落としたりこぼしたりしただけでも激怒しますから。残すなんてもってのほかで、私も厳しくしつけられましたわ」
にこにこ笑顔で語るが、その横にいるカノープスはまだふてくされている。
「とりあえず、文曲の祠まで回りました」
スピカが入手した星鏡とその他のアイテムを見せた。兼貞の祠はちょうど折り返し地点で、時刻が3時であることから、1日の行程の半分を消化したことになる。
「ところで、ここでもクリスタルがもらえるんですよね」
スピカが尋ねる。
「ええ。クリスタルと試練に関する本が入手できます。がんばってくださいね」
「で、何をすればいいんだ?」
すると孫娘さんは答えた。
「1時間の瞑想です」
「瞑想?」
「ええ、両手を合掌して正座する。それを1時間していただきます」
にこやかに返す。紫微垣の修行の時に瞑想はやっている。が、30分が限界であった。しかもシリウスは瞑想が苦手で、20分過ぎた頃に姿勢が崩れたり居眠りしたりすることが多かった。そこにアルクトゥルスの喝が飛んできて「やり直し!」となることが定例化していた。
「…大丈夫、シリウス?」
ミラもスピカも心配そうにシリウスをうかがう。彼女らはシリウスの修行をよく見てきたから、苦手であることを知っているのだ。
「…やるしかないだろう」
シリウスは観念したかのように立ち上がった。
「どこでやればいいんだ?」
孫娘さんは別の部屋に通してくれた。
そこはふすまが開け放している部屋で、外に兼貞の祠が見える。部屋から祠に向かって祈るということか。
早速、シリウスは正座して手を合わせる。そして目を瞑り、瞑想を始めた。
――それから1時間。皆別室にいたが
「そろそろいいかしら?」
というスピカの一言で立ち上がる。シリウスが瞑想している部屋に行ってみると……
「シリウス……」
1時間前と変わらぬ姿勢で瞑想をしていたのだ。ミラが前に回り込んで見てみても、姿勢も表情も崩れていない。
「素晴らしいですね。合格です」
「やったね、シリウス!」
ミラが抱きつく。その瞬間、シリウスが真横に倒れ込んだ。
「ちょっ、シリウス!?」
「きゃあっ、どうしたの!?」
スピカとミラが叫ぶ。それに答えるようにシリウスは声を振り絞った。
「…ない」
「え?」
「足がしびれて、立てない……」
「まあ、際どかったが合格でよかろう」
カノープスが目を細めて言った。シリウスはというと、まだ足がしびれているようであぐらになって足をもんでいる。カノープス曰く「こんなに瞑想が苦手な候補生は初めて」とのことだ。
「どうじゃった、1時間の瞑想は?」
「ああ、始めは雑念が多かったけど、段々なくなっていった。何かに包み込まれているような……」
するとカノープスはあごをなでながら言った。
「その感触、忘れるな。紫微垣になった時、心が乱れても誰も助けてはくれん。助けられるのはお前自身じゃからな」
心が乱れることを止めることはできない。が、乱れた後に整えることはできる――それを会得することが、大きな目的だった。
「さて、それでは……」
と、孫娘さんが二つのものを出してくれた。一つは星鏡、もう一つは本だった。
「この本は、最後の破軍の祠で使うことになります。持って行ってください。あと、使い終わったら返してくださいね」
紫微垣になる人のためにずっと保管しておくという。このような人たちの力を借りて、紫微垣は継承されてきたと今更ながらに思った。