Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

紫微垣の試練⑨――武曲(むごく)の祠

 星鏡は五つ、その他のアイテムは星金、塩、炭、そして本だ。残す祠はあと二つ――。
 シリウス、ミラ、スピカの3人は六番目の武曲の祠に着いた。この祠は直接、北辰の祠に続く道がある。また、シリウスの庵が近いこともあり、馴染みの深い祠だ。
 3人は祠にお参りをし、しばらく待った。日が傾いて夕暮れが近づいている。日没まではあと1時間というところか。
「来た……」
 シリウスは七星剣を構える。祠の陰から何者かが出てきた。ここまでさまざまな試練を体験してきた。もはや驚くこともあるまい……そう思っていたのだが。
「な!?」
「え!!」
「そんな!!」
 3人とも驚愕した。現れたのは――シリウスそっくりの人物だ。
「…シリウス、あなた1人っ子よね?」
 スピカが耳打ちする。
「ああ、親からも施設の大人からも、兄弟がいたって話は聞いたことがない。隠し子がいれば話は別だが……」
 するとミラがシリウスの腕につかまってきた。
「誰なの、あの人?」
 13歳にしては大きめの胸が、シリウスの腕に当たっている。それを見たスピカはまたもやもやしてきた。
(この子、何なのよ……)
 試練もクライマックスに近づいているのに――ミラの行動と自分の心の動揺に苛立ちを募らせるスピカ。
 一方、シリウスは剣の柄を上にした。防御のために七の秘剣・文綾の星を発動できるようにしたのだ。
「…ソンナモノイラナイヨ」
 シリウスらしき人物は、機械が割れるような耳障りな声を出した。
「何者だお前」
 シリウスがにらみつけると、シリウスもどきは右手を挙げて人差し指をかざした。その瞬間、3人の足元に闇ができ、引きずり込まれていった。

「ってて……ここは?」
 シリウスは目を覚ました。闇に引きずり込まれたところまでは覚えている。ここは別次元の空間か何かか?
「シリウス」
「スピカ、そっちか」
 スピカの声がした方に、手探りで腕を伸ばす。すると何かに当たった。
「それ……私の胸……」
 スピカの恥ずかしそうな声がして「す、すまん!」と慌てて離す。
「シリウスー!」
 ミラの声もする。3人とも無事か。3人が相互に肉眼で確認できる距離に来た時、さっきのシリウスもどきが現れた。
「ヨウコソ、ココロノヤミノクウカンニ」
「こころの…やみ?」
 ミラがきょとんとした。「心の闇の空間」ということか。
「キミタチハ、シビエンニナルタメニガンバッテイル。ケド、ソレゾレニタイシテヤミをカカエテイル」
 シリウスもどきは「ニイィイ」と口が裂けんばかりに口角を上げる。
「くだらん。さっさとここから出せ。さもなければ……」
 シリウスは一の秘剣・魚釣り星を闇に向けて放つ。しかし、空を切るだけだった。
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