Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

シリウスの秘剣

「シリウスー! がんばって!!」
 天漢癒の腕輪で作った膜の中から、ミラが叫んだ。スピカも一緒である。戦いの最中、シリウスが負傷したら回復するとともに、戦いの知恵を授けるためにこの場に立ち会っている。
 シリウスは「任せろ」というような目線を2人に送り、盗賊たちに向き合った。
「二の秘剣・螺旋昴!!」
 術者の真上に竜巻のように巻き上げる技だが、シリウスはこれを横向きに発動させ、盗賊たち数十人を吹き飛ばした。岬の下の海にどんどん落ちていく。
「四の秘剣・破十字!!」
 シリウスは盗賊の剣に七星剣を巻き付ける。これまでは1本の剣や棒に巻き付けて折る技だったが、素早い動きで敵陣をかいくぐり、一度に10本ほどの剣や槍、棍棒に巻き付ける。ボキンッ、という音とともに、それらの武器が折れた。
「なっ……!」
 驚く盗賊たちに、手槍に変形させた七星剣を向ける。
「降伏しろ。お前ら雑兵に勝ち目はない」
 続いて三の秘剣・三連突きを繰り出す。槍の穂先が敵の腕に突き刺さる。今のシリウスは突きを扇形に繰り出せる応用技を使うまでになった。一つの突きで1人に攻撃でき、一瞬で3人を戦闘不能にできる。浅く突くので致命傷にはならないが、もはや武器をふりまわすことはできない。五の秘剣・錨星で戦闘不能になった者たちをひとくくりにし、海に向かって放り投げた。
 さらには、シリウスの防衛ラインを突破した10人ほどがポラリスに向かう。が、シリウスは落ち着き払って六の秘剣・釣り鐘星を発動させた。刹那、剣先が誘導ミサイルのように盗賊たちを追撃する。折れ曲がっても、2回、3回、4回と次々に仕留めていく。
「くそっ、これならどうだ!!」
 敵の数人が石や弓矢、投げ槍で投擲してきた。すると七の秘剣・文綾の星で動きをとめ、それらの動きを変えて跳ね返した。
盗賊たちは「うわああああ!!」と悲鳴を上げ、自ら海に飛び込んで逃げた。
「これで雑兵は片付いたな」
 凄まじい迎撃だった。シリウスは紫微垣の試練やその後の短い修行で、一から七の秘剣の応用技を編み出すことに成功した。200人近くいた盗賊は次々に海に放り込まれ、残ったのはアルタイルとベガだけであった。

「こいつ……」
 アルタイルは顔をしかめた。以前戦った時とは比べものにならないほどの成長である。
「今日はこの前のようにはいかないぜ」
 シリウスは七星剣を2人に向かって構えた。対するアルタイルとベガは、それぞれ剣を抜いた。アルタイルは言わずと知れた魔剣・コラプサーで、ベガは細身の剣である。
(…マジかよ)
 シリウスは冷や汗を流す。アルタイルは足の速さやコラプサーの威力が驚異だが、太刀筋自体を考えるとさほど熟練してはいない。だが、剣を構えた女性剣士・ベガは超一流の使い手と分かる。
(ベテルギウスより上だろうな…)
 かつて悪友と切り結んだ時、純粋な剣技では適わないことを悟った。その相手より上なのである。しかし、ためらっている場合ではない。
「いくぞ!」
 シリウスは、地を蹴って敵2人に突進した。
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