Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
潮風
岩屋を突破したアルコルとミザルは、海岸が見下ろせる高台に来た。後に「巨門の祠」が建てられる辺りである。進んでいくと谷があり、1本の吊り橋がかかっていた。向こう側に渡るにはここを通らなければならない。
「高いなあ…」
アルコルは谷底を眺める。落ちたらひとたまりもないだろう。しかし、彼はもはや怖じ気づくことも及び腰になることもなかった。紫微垣となった使命感で自信が満ち始めていたのだ。
2人は荷物を背負いながら、難なく吊り橋を突破した。途中で強い潮風が吹き、吊り橋が揺れることがあったが、意に介さず通り抜けた。
「あれ、アルコルたちじゃないか!?」
ちょうど海岸に舟を着けた時だった。何気なく空を仰いだフェクダが叫んだ。吊り橋を渡っていくのが見えたのだ。
「ほんと! あんなところに!!」
「ようし、追いかけようぜ!!」
3人は、長い階段を駆け上がって追いかけた。しかし彼らは、吊り橋にたどり着いて愕然とした。橋は思ったよりも細いロープで吊されていて、足場はボロボロの板だった。しかも谷底までかなりの高さがある。
「あいつら、ここを渡っていったのかよ!?」
フェクダが青い顔で叫ぶ。
「い、行くぞ!!」
「ええ!?」
ドゥベーの号令にフェクダが戸惑う。
「ここまで来たんだ! 行くぞ!!」
3人は吊り橋に歩み出した。が、半分くらい進んだところで強烈な潮風が吹き、橋がグラグラと揺れた。
「うわっ!!」
「きゃあっ!!」
「ひいいっ!!」
情けない声でロープにしがみつく。その拍子に、フェクダとメラクの荷物が真っ逆さまに落ちてしまった。持ってきた軽食や飲み物が入っていたのに……!!
「ああっ!!」
仕方なく荷物を諦め、何とか吊り橋を渡りきった。
その頃。アリオト、メグレス、ベナトナシュは北の村の西側に到着していた。この時代のこの場所は家がまばらで人口も少ない。3人は上陸した後、さらに北上した。特にあてがないので、人が多そうな場所を探すことにした。
ところが高台――後世の武曲の祠がある辺りまで来た時、人家がほとんどないことに気付く。
「あらあ、どうしましょうか」
メグレスが困惑したようにつぶやく。ベナトナシュは暗い表情をして、アリオトもきょろきょろしている。そもそもこの3人は大人のくせに計画性がなく、ミザルが見たら「話にならん」と皮肉を言うだろう。
するとアリオトが提案した。
「西に行ってみよう。あっちは行き止まりだ。探してアルコルが見つかれば儲けものですよ。いなければここまで引き返して逆の東に向かえばいい」
3人は西――破軍の祠が建てられることになる地点を過ぎ、さらに西に行った。森があるだけで特に人の気配はない。
「いないんじゃないの?」
ベナトナシュがいらだたしげにアリオトに言う。本当にこの男は頼りにならない…そんなことを思っているのだろう。
「もう少し探してみるか」
メグレスは右側へ、アリオトは左側へ、ベナトナシュは中央の獣道を進む。しかし、誰もいない。ベナトナシュはやがて、小さい岬に出た。
「ったく、アリオトったら! 穀潰しはろくなことを考えないね!!」
あの男と再婚してから、私の人生はめちゃくちゃだよ! そんなことを吐き捨てた。すると突然、後ろから羽交い締めにされ、口を塞がれた。
「呼んだか?」
「むぐっ……」
ベナトナシュを羽交い締めにしたのは――アリオトだった。
(な、何を……)
「ベナトナシュ、初めて会った時のお前は、陰はあるけど美しかった。それがいつの間にかやつれたおばさんになったな……」
アリオトは氷のような目を近づける。
「今のお前はただの陰険女だ。アルコルに見放されたし生きていても仕方ないだろう? 俺はあの眼鏡の先生と仲良くするから、ここで退場してくれよ」
そう言うと、アルコルはベナトナシュを岬から蹴り飛ばして突き飛ばした。
「ああああっ!!」
ベナトナシュの叫び声は潮風にかき消され、その体は絶壁の下に真っ逆さまに落ちていった。
「誰かいましたか?」
「いえ、いませんでしたね」
アリオトは何食わぬ顔でメグレスと合流した。
「あら? 奥様は?」
「はて、迷子になってしまったのかな?」
しらじらしく答える。
「探した方がいいですね」
森に再び掛けだそうとするメグレスの腕を、アリオトがつかむ。そのまま自分の体に抱き寄せた。
「お、お父さん?」
肩を抱かれ、驚くメグレス。が、嫌な気はしない。
「先生、もうこのまま2人で彼らを探しませんか?」
何をばかな――と言うべきところだった。が、メグレスは顔を赤らめて
「……はい」
と答えてしまった。つい先ほど、この男が惨劇を引き起こしたとも知らずに……。
「高いなあ…」
アルコルは谷底を眺める。落ちたらひとたまりもないだろう。しかし、彼はもはや怖じ気づくことも及び腰になることもなかった。紫微垣となった使命感で自信が満ち始めていたのだ。
2人は荷物を背負いながら、難なく吊り橋を突破した。途中で強い潮風が吹き、吊り橋が揺れることがあったが、意に介さず通り抜けた。
「あれ、アルコルたちじゃないか!?」
ちょうど海岸に舟を着けた時だった。何気なく空を仰いだフェクダが叫んだ。吊り橋を渡っていくのが見えたのだ。
「ほんと! あんなところに!!」
「ようし、追いかけようぜ!!」
3人は、長い階段を駆け上がって追いかけた。しかし彼らは、吊り橋にたどり着いて愕然とした。橋は思ったよりも細いロープで吊されていて、足場はボロボロの板だった。しかも谷底までかなりの高さがある。
「あいつら、ここを渡っていったのかよ!?」
フェクダが青い顔で叫ぶ。
「い、行くぞ!!」
「ええ!?」
ドゥベーの号令にフェクダが戸惑う。
「ここまで来たんだ! 行くぞ!!」
3人は吊り橋に歩み出した。が、半分くらい進んだところで強烈な潮風が吹き、橋がグラグラと揺れた。
「うわっ!!」
「きゃあっ!!」
「ひいいっ!!」
情けない声でロープにしがみつく。その拍子に、フェクダとメラクの荷物が真っ逆さまに落ちてしまった。持ってきた軽食や飲み物が入っていたのに……!!
「ああっ!!」
仕方なく荷物を諦め、何とか吊り橋を渡りきった。
その頃。アリオト、メグレス、ベナトナシュは北の村の西側に到着していた。この時代のこの場所は家がまばらで人口も少ない。3人は上陸した後、さらに北上した。特にあてがないので、人が多そうな場所を探すことにした。
ところが高台――後世の武曲の祠がある辺りまで来た時、人家がほとんどないことに気付く。
「あらあ、どうしましょうか」
メグレスが困惑したようにつぶやく。ベナトナシュは暗い表情をして、アリオトもきょろきょろしている。そもそもこの3人は大人のくせに計画性がなく、ミザルが見たら「話にならん」と皮肉を言うだろう。
するとアリオトが提案した。
「西に行ってみよう。あっちは行き止まりだ。探してアルコルが見つかれば儲けものですよ。いなければここまで引き返して逆の東に向かえばいい」
3人は西――破軍の祠が建てられることになる地点を過ぎ、さらに西に行った。森があるだけで特に人の気配はない。
「いないんじゃないの?」
ベナトナシュがいらだたしげにアリオトに言う。本当にこの男は頼りにならない…そんなことを思っているのだろう。
「もう少し探してみるか」
メグレスは右側へ、アリオトは左側へ、ベナトナシュは中央の獣道を進む。しかし、誰もいない。ベナトナシュはやがて、小さい岬に出た。
「ったく、アリオトったら! 穀潰しはろくなことを考えないね!!」
あの男と再婚してから、私の人生はめちゃくちゃだよ! そんなことを吐き捨てた。すると突然、後ろから羽交い締めにされ、口を塞がれた。
「呼んだか?」
「むぐっ……」
ベナトナシュを羽交い締めにしたのは――アリオトだった。
(な、何を……)
「ベナトナシュ、初めて会った時のお前は、陰はあるけど美しかった。それがいつの間にかやつれたおばさんになったな……」
アリオトは氷のような目を近づける。
「今のお前はただの陰険女だ。アルコルに見放されたし生きていても仕方ないだろう? 俺はあの眼鏡の先生と仲良くするから、ここで退場してくれよ」
そう言うと、アルコルはベナトナシュを岬から蹴り飛ばして突き飛ばした。
「ああああっ!!」
ベナトナシュの叫び声は潮風にかき消され、その体は絶壁の下に真っ逆さまに落ちていった。
「誰かいましたか?」
「いえ、いませんでしたね」
アリオトは何食わぬ顔でメグレスと合流した。
「あら? 奥様は?」
「はて、迷子になってしまったのかな?」
しらじらしく答える。
「探した方がいいですね」
森に再び掛けだそうとするメグレスの腕を、アリオトがつかむ。そのまま自分の体に抱き寄せた。
「お、お父さん?」
肩を抱かれ、驚くメグレス。が、嫌な気はしない。
「先生、もうこのまま2人で彼らを探しませんか?」
何をばかな――と言うべきところだった。が、メグレスは顔を赤らめて
「……はい」
と答えてしまった。つい先ほど、この男が惨劇を引き起こしたとも知らずに……。