蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜
桐生さんが取り分けてくれようとしたので私は慌てて菜箸を手にした。

「私がやります」

取り皿によそうと彼の手元に並べた。

「ありがとう」

嬉しそうに口にした彼はよほどこの料理が好きなのだろう。私も口にするが本来美味しいはずのこの料理の味がしない。それほどに今緊張している。桐生さんは将来有望なパイロットとして我が社WALでも一目置かれた存在。もちろん私のようなカウンター業務の人間が話しかけることもない存在。常にCAに囲まれキャビンに入っていく姿を見かける。そんな存在の桐生さんがどうして私に気がついたのか疑問に思う。でも今はそんなことより今日の彼の女性除けの役に立ち、私の仕事は終わった。早く食事を終わらせ解散しなければ、との思いでいっぱいだ。

「悠里ちゃんはどうしてWALに入社したの?」

気の抜けたような声で質問する彼はいつも見かける仕事の時の様子とはどこか違う。悠里ちゃんなんて気安く呼ぶのももう船を降りたのだからやめてもらいたい。

「桐生さん、鷺宮と呼んでください」

「どうして? 今はプライベートなのに」

そう言われると間違ってはいない。けれど彼とプライベートで関わるなんて今まで想像すらしたことがなかった私には現実味がない。今の状況でさえ本当はうまく飲み込めていない。

「でも、私たちは立場も違いますし」

「プライベートなのに?」

何度もプライベートだと言われてしまうと困ってしまう。明日からどんな顔をして彼に会えばいいのだろうか。
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