蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜
休憩時間を終えるとまたカウンターの中では周囲からの視線に辟易させられたが、もう気にしないと決めた。彼と結婚すると決めたからにはいつかは知れ渡ってしまう。だから視線を気にしても始まらない。
午後になりカウンターに立つと午後出勤の瑛人さんが宮下機長と共にカウンターを通る。
「行ってきます」と彼から先に声をかけられた。私も「いってらっしゃいませ」と返すと頷き、そのままゲートを抜けていった。

「きゃー、桐生さんから声をかけるなんて珍しいわね」

周囲からそんな声が上がった。でもそれは私に対して声をかけたと言うよりは、その場にいた人みんなに声をかけたと捉えられたようだ。それはそれで悔しいようなホッとしたような複雑な気持ちになった。

「桐生さんってクウォーターなのよね。正統派のイケメンって感じで近寄りがたいけど、こうして気さくに声をかけられたら狙っちゃうわよね」

「あの顔に、あの声。最高すぎる。クールな彼があの時はどうなるのかしら」

下世話な話が小声なのになぜか大きく聞こえてくる。すると後ろからきた結城さんたちのクルーが通りかかった。

「そんな話をここでするなんて恥ずかしくない?」

結城さんはいつもの人あたりのよさそうな表情を消し、そう告げた。すると一緒にいた機長も彼女たちに冷たい視線を浴びせる。

「見た目しか見ていない君たちには桐生君の本当に良さなんてわからないだろうな」

彼女たちは焦ったような表情を浮かべるが口から出てしまったものは取り消せない。

「すみません」

「謝るのは私にではない。この場に立つと言うのは我々WALの顔なんだからもっとプロ意識を持って立ってほしい」

ふたりはそう告げると機内へと入っていった。彼女たちは青ざめ、口を噤んだ。
ゲートが開き、案内が始まるが表情は硬いまま。そのまま私語をせず黙々と業務にあたっていた。
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