蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜
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ようやく彼女と接点を持つことができた。
彼女のことに気がついたのは半年くらい前だっただろうか、いつも笑顔でいってらっしゃいませと声をかけられることに気がついたのは。他のスタッフもそう声をかけてくれることは往々にしてあるがみんな下心のあるような雰囲気を感じ返事を返すこともおざなりになりがちだった。クルーからもことあるごとに何かと声をかけられ正直なところ辟易していた。みんな自分の持つパイロットとしての肩書きや人よりも色素の薄めな俺の見た目しか見ていないことは明らかだった。
祖父がスウェーデン人で祖母は日本人。その時代には珍しいカップルで相当周囲の反対や偏見があったようだが、貿易商だった祖父がたまたま日本を訪れていた時に知り合い恋に落ちた。今でも祖父母は手を繋いで歩き、寄り添うように暮らしており仲睦まじい。そんな祖父母の影響を受けた父も母とは恋愛結婚で俺と弟が生まれた後も変わらずに仲がいい。自分にもいつかそんな人が見つかると、とは思っていても俺の取り巻く環境の中でそんな人が見つかるとは思えなかった。そのくらいに周囲からの視線は重苦しいものでしかなかった。仕事のパートナーとしてもちろんコミュニケーションをとることは大切なことで話はするが、プライベートまで一緒に過ごしたいと思えないというのが正直な気持ちだった。
そんな中、彼女がゲートの開く前からお客様と話している姿やゴミが落ちていれば拾う姿、走り回る姿をよく目にすることに気がついた。他のスタッフが雑談している時でもなぜか彼女はパタパタと動き回っている。みんなに笑顔でいってらっしゃいませと声をかける姿を本当によく見かけていた。そして彼女にだけは自然と「いってきます」と返事を返している自分がいた。
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