狂気のお姫様

第3節 強めのロケット団

【side 小田奏見】

女の子は女の子らしくしなさい、なんて誰が決めたのか分からないが、少なくともお前に命令される筋合いはない。

私が昔から思っていたことだ。

可愛い可愛いと言われるのが嫌でバッサリ髪を切ってショートにしたり、スカートを全部捨ててパンツしか履かなかったり。

今では無茶したな、と思うが、そんな思春期の戯言なんて今になってはどうでもいい。

可愛いと思ってほしい人に思われればいいし、その人が『髪が長い方が似合う』って言うのなら髪を伸ばすし『茶色の方が似合う』っていうのなら染める。

ただ、面倒なのも事実であって、たまに自分のことが分からなくなるのだ。



なーんて、東堂に言ったら「乙女かよ。きも」と一蹴されるので言わないけど。

そんなセンチメンタルな考え事をしながら廊下を歩く、物憂げな私、小田。

羽賀さんに呼び出されている、という哀れな友人を見捨て、帰る気満々。



なのに、

「蓮ちゃんもうちょっと頑張ってよ」

「疲れた」

こうもよく遭遇するもんだ。


「もっと深くなんねぇかな」

「疲れた」

「こう、なんつーかな、陽介が入って出てこれねぇぐらいのさ」

「腹減った」



何をやっとるんだコイツらは。

お察しの通り、中庭に凸凹コンビ。

2人とも、大きめのスコップを持っており、佐々木さんはタオルを頭に可愛く巻いて何かを意気込んでいて、一方長谷川さんは足を伸ばして座っている。

そして2人の目の前に大きな穴。


何をやっとるんだコイツらは(2回目)


「あ、小田ちゃん」

「小田じゃねぇか」


2人の姿が見えた瞬間、気配を消して立ち去ろうと思ったのだが、あまりの珍百景に足を止めてしまった。

くそ…策略か…。

バレてしまったものはしょうがないので、ペコリと頭を下げて「こんにちは…」と小さく挨拶をした。


「何してんのー?」

それはこっちのセリフじゃないか??

「いや、今から帰るとこです」

「あれ、律ちゃんは?」

「あー、なんか、野暮用で」


なんだか面倒なので、羽賀さんに呼び出されているらしい、とは言わないでおこう。


「小田、お前も掘るか」

「嫌です」

「蓮ちゃんやめようとしてるでしょ!ダメだかんな!」

「チッ…」


さり気なく誘ってきた長谷川さんをすっぱり断ると、長谷川さんはそのまま寝転がった。


「で、何してるんですか」

「え、落とし穴作ってる」

それは見りゃ分かるんだよ。

「何故にですか」

「陽介落とそうと思ってさ!」

「えっ」

「面白くない?」


そんな理由でロケット団2人組に穴に落とされる如月さんが不憫すぎるんだけど。


「頑張ってください」

これは関わらないでおこう。少しでも関わって私のせいにでもされたら最悪だ。

そう思い、踵を返そうとするが、


「小田ちゃんも掘ってこうよ!」

奴ら(特にちっちゃい方)は簡単には帰してくれない。

そんな『ちょっと飲みに行こうよ!』みたいに軽く誘われてもだな。


「遠慮しときます」

「うわ!はっきり言われた!蓮ちゃん!今俺はっきり言われたよ!」

「……おう…」

「蓮ちゃん寝ないで!!!」


ここは動物園か?
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