狂気のお姫様
怒り狂いそうになっているが、いや、もう怒り狂ってはいるのだが、意外にも脳みそは冷静。

こんな格好じゃ廊下も歩けないじゃないか。

完全にのびている女たちを横目に、トイレの窓から脱出を試みる。

今の時期は、冬じゃないにしてもこのままでいれば風邪をひく季節。どこかで乾かさないといけないが、そういう場所といえば保健室。しかしこの学校の保健室に使えそうなものがあるのかどうか…。

ポタポタと水滴が落ちる髪の毛をしぼり、できるだけ人目にふれず、校内に入らず保健室を目指そう、と中庭を横切ろうとすると、



「え、律ちゃん?」

そうだ。中庭は金髪の巣だった。

「なに、え、なんでそんなびしょびしょなの」

だがしかし、私は今怒っているのだ。

「水かぶったからです」

「え、なんか怒ってる?すごいムスッとしてない?」

これで怒ってないバカがいるものか。

鳴さんが駆け寄ってきてくれるが、私の機嫌は直らない。


「えぇそうですね。めちゃめちゃムカつくのでイライラしてますけど何か」

だから話しかけてくんな、とでも言うように冷たい視線を向け踵を返すが、



フワッ

甘い香りに包まれた。



「ちょっとさすがに風邪ひくから」

呆れ笑いの金髪は、自分が着ていたカーディガンを私の肩からかけてくれた。


「濡れますけど」

「いいよ別に」

「どうも」

「ちょっと待ってこの子めちゃめちゃイライラしてるんだけど」


正直ちょっと寒かったので、カーディガンは有難い。

が、イライラは一向におさまらない。


「腹立つ」

「何があったの」

「寒い」

「先に乾かさないとだな」

「鳴さん笑うと思ってた」

びしょびしょの私を見て、大爆笑しだすのかと。しかし、もはや敬語も崩れている私に対してカーディガンをかけてくれるなんて、こいつちょっと良い奴かもしれないな。


「えー、そんな薄情に見える?」

「見える」

「ひど。まぁ面白いのは面白いけど。濡れ鼠みたいで」

誰がねずみだ。


「保健室にドライヤーあったと思うんだよなー」

まぁ、知らない人に見られるよりかは知り合いと会う方がいいのかもしれない。佐々木夕だけは嫌だけど。

「寒い」

「はいはいちょっと我慢してねー」

カーディガンごとぎゅうっと自分を抱き締めると、少しだけあたたかくなった。

ていうかこの人のカーディガンいいにおいするんだけど。思わずカーディガンをすんすん匂ってしまう。

「やだー、律ちゃんったら変態♡」

「…」

「流れるような無視」
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