狂気のお姫様
「ま、私教室戻るから。じゃあね」
さっきからくだらない茶番に付き合わされていたが、私がここに留まる理由なんてない。一刻も早くここから抜け出させてもらう。
個性豊かな5人の相手をしてきたし、私は疲れてるんだ。敵意を見せて何か仕掛けてくるならまだしも、水面下でちまちま動いている奴の相手をする余裕はない。
「東堂さんも戻んの?俺もー」
「えっ」
まさかついて来るとは思ってなかったので、少し戸惑う。
ちょっと。鹿島杏奈はどうするんだよ。
チラリと彼女を見ると、さすがに放置されると思っていなかったのか、彼女自身も戸惑っている様子。
がしかし、私についてくるとなるとプライドが許さないのだろう。「え、蘭くん行っちゃうの?屋上は?」と狼狽している。
まぁ私には関係ない。私が連れていってるわけじゃないしな。
「俺東堂さんと話してみたかったんだよねー」
何をだ。
初対面で話すことなんてないんだけど。
鹿島杏奈は完全に放置で、もう置いていく気満々。
「じゃあな、小島さん」
と手を振る始末。
「…」
「…」
誰だよ!
誰だよ小島!!!
小島じゃないよ!鹿島だよ!!!
心の中で盛大に突っ込んじゃったよ!!
ほらー、またこっち睨んでるじゃん。私のせいじゃないってのにさー。
「はぁ…」
小さくため息をつくと、「あのさあのさ」とピュアな少年は後ろをついてくる。
「なに…」
「あ、俺蘭な。蘭って呼んで」
「はいはい。東堂律です」
「東堂?律?なんて呼ぼう。やっぱり律かな」
好きにしてくれ。こっちは疲れてるんだ。
「あ、そうだ。小田さんも仲良いんだろ?なんか兄貴が話してた」
「そうそう。また話してみればいいよ」
小田は嫌がるだろうがな。
「律は天の誰かと付き合ってんのか?」
はぁ?
「なわけないじゃん」
いきなり何を言い出すのかと思えば。
ただあの性悪5人組に遊ばれてるだけだわ。
「そんな噂が流れてたからさー」
「噂は噂止まりだってことだね」
「律可愛いからあの人たちの誰かと付き合っててもおかしくないと思ったんだけどなー」
ふむ。悪い気はしない。
ちょこまかついてくるメガネは、なんだか大型犬みたいで少しだけ可愛い。
それにしても、
「よく今まで長谷川さんの弟ってバレなかったね」
そこが気になるところだったのだ。
「メガネかな?性格も全然ちげぇし、長谷川って苗字そんなに珍しくないしなー」
確かに。顔は長谷川兄並に整ってはいるものの、メガネのせいで少しぼやけてしまっている。
「ていうかなんで私と話してみたかったの」
「この前さっきの小島さんと廊下でバトってたじゃん」
「鹿島だよ」
普通に突っ込んでしまったじゃないか。
「あれ、鹿島か。間違えてた」
蘭は悪気なさそうに笑う。
「あ、それでなー、なーんか面白そうだったから話しかけてみたかったんだよ」
アバウト。
とてつもなくアバウト。
そして、
彼らと考え方が一緒だ……………。
───「許さない…」
そんな私たちの背中を睨み、唇を噛み締める女が1人─────