狂気のお姫様

第5節 怒りの飛び蹴り

「で、これどうするんですか」

西城を占める『空郭』は完全に壊滅状態。

もう城ヶ崎に喧嘩を売ってくることはないだろう。多分。



そしてだ。

この死体の山を、どうするのか。


「え、放置」

「えっ」

放置だった。




愁さんは『何言ってんだこいつ。放置に決まってるんだろ』とでも言うような顔をしてるし、陽ちゃんもいつものアホみたいな顔でボケッとしている。

まじで放置?

ほら、家の仕事とかをしてると『掃除屋』がいるから放置でもいいとして、え、ほんとに放置?


「そういうもんだ、律」

「そうなの??????」

いやぁ、族って適当でいいんだなぁ。びっくりしちゃったよ…。




「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」

「ところでさっきから小田の様子がおかしいんだけど」


一応収拾がついたので小田を呼んできたのだが、先程からこの様子。

永遠に念仏を唱えている。

死んでないから。確かに死んだようには見えるけど、残念ながら死んでないから。


「小田ちゃーん!白目剥いてる!ぎゃははは!」

佐々木夕は既に小田をおもちゃにしていて腹を抱えて笑っている。あんた本当に元気だな。


「もー、疲れた。帰ろ」

鳴さんは死体(死んでないけど)の上に座って膝に頬杖をついており、お疲れのご様子。

いや、あんためっちゃ楽してたやん、と突っ込みたい気持ちでいっぱいだ。

しかし帰りたいのには同感。

でもこれ、私たちどうやって帰ればいいんだろ。私と小田は敵の車に乗せられて来たから帰る手段がないんだよな。

と思ったときだった。



ブォンッ

バイクの音と共に、

「お疲れっすー」

なんとも気の抜けた声の男が倉庫の中に入って来た。


「え、蘭?」

「やっほー。お迎え来たよー」

いつもの眼鏡とグレーアッシュの髪の毛。

長谷川兄弟大集合である。


「蘭ー!やっと来たかー!」

「夕さんお疲れっすー」

「お前もっと早く来いよ!そして手伝え!」

「それは無理ですよー。俺喧嘩できねぇもんー」


そうかなるほど。

愁さんは今バイクを修理に出しているらしく、長谷川蓮はバイクを持っていない、となると、私たちが帰るためには1台足りないのだ。

というわけで、蘭が来てくれたらしい。

いつ呼んだのかは分からないが、準備がいい。そして来るタイミングもバッチリだ。



「蘭くん!」

「いやー、良かった良かった2人が無事で。かなみん大丈夫だったかー?」

「体は無事。心は瀕死」

「癒しが必要だなー。パフェかー」

「いやでも蘭くんの登場でだいぶん癒されたよ。ここ、悪魔しかいないもん」

「ぶはっ!悪魔って!」

おい誰が悪魔だ。もしや私も入っているんじゃないだろうな。

「まじで怖かった」

「小田、さっきまで念仏唱えてたもんな」

「かなみん僧目指してるの?」

なわけねぇだろ。
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