狂気のお姫様
「よくも騙してくれたよね」
「ほんっと最低」
「あんたの居場所なんてここにないから」
ハニーピンクのふわふわだった髪の毛はガタガタに切られ、水をかぶったのか全身びしょびしょ、数人の女に囲まれている、鹿島杏奈。
「うわ…」
小田が顔を引き攣らせながら小さく声をあげる。
移動教室の途中なので、どうしてもあの横を通らければならないのだが、巻き込まれる自信しかない。
あの女たちは誰だ…。
鹿島杏奈の取り巻きたちではないが、たまに一緒にいるのを見たことがある気がする。こないだまで私の悪口で飯を食ってた奴らだな。でもこの前のあのロビーにはいなかった。
ふぅん。噂を聞いて鹿島杏奈を虐めてるってところか。
「あれ!東堂さんじゃん!!」
おっと、気づかれてしまったようだ。
「聞いたよー、東堂さんも災難だったよねー!この女、まじで最低だよねー!」
「痛い!!」
鹿島杏奈の髪の毛を掴む女たちは、にやにや顔で彼女の顔を私の方に向ける。
「まぁ、そうだね。最低だね」
「だよねー!東堂さんもやっちゃいなよ!!」
小田は何かを感じ取ったのか、スッと一歩だけ下がる。
頭の悪い奴ら。こういう奴らが1番嫌い。人の弱みにつけ込むハイエナ共が。
「でもあんたたちも私を悪いように言ってたよね」
少しの殺気を込め、表情を変えずにそう言い放つと、女たちは焦りを見せる。
「え、あ、ごめ、でもそれはこの女が…」
「そ、そうだよ、私たちは東堂さんの味方で…ウグッ!!!!」
考えるより先に手が出ていたようだ。
「あぁ、ごめん、うざかったから」
「ヒッ…」
蹴り飛ばした女は床に蹲り、苦しそうに咳き込む。
「今すぐ目の前から、消えろ」
そう言い放つと、女たちは蹲っている1人を連れ、いそいそと逃げていく。雑魚でしかない。
そしてだ。
「り、律ちゃん……ありが…」
バチ-ン!!!
「そっちにも手を上げる」
小田が強かにツッコミを入れてくるが、私は怒っている。
ふいに私からビンタを食らった鹿島杏奈はせっかく起き上がったのに再び床に逆戻り。
「え、なん…で」
「知らねぇよ。こないだまで私の悪口言ってた奴らがいきなり掌返して『味方だよ!』って顔するのが腹立つだけでお前なんかどうでもいいし自分のケツぐらい自分で拭けクソまみれ!!!」
「口悪」
うるさい小田。
こいつが虐められようがどうなろうが私に知ったことではない。が、虐められるなら虐められるで私のいないところでやってほしい。
鹿島杏奈はグッと唇を噛み俯く。
これ以上話すことは何もないし、関わることもない。
また私に向かってくるなら応戦するが、そうでないのならば用はないのだ。仕返しは充分にしたし。
「行くぞ」
「はーい」
あとは勝手にやってくれ。