狂気のお姫様
第10章

第1節 ケーキを奢るロリコン

皆様、覚えているだろうか。

「……」

「ねぇジローさん」

気にはなっていたのだが、最近何かと忙しかったせいで結局聞けずじまいだったアレ。

「……」

「なんで黙ってんのジローさん」

今目の前で、胡座をかき腕を組みながら目を瞑ってるこのおじさん…いや、ジローさんが言っていた、アレ。


2、3ヶ月後…と聞いていたのに、一向に何も言われず、ただただ体を鍛えて完璧ボディーとなった私。ほんとにいい姪だと思う。

組関係の争いかと思ったのだが、それにしては組員が静かだし、もしそうならさっちゃんが何も知らないはずがない。

さっちゃんに調べてもらって分からなかったのだから、もうこれは本人に聞くしかない、ということで休日、頼れる用心棒……いや、さっちゃんを連れ、ジローさんに聞きに来たのだが……。

「次郎」

「おう……」

この煮え切らない叔父の態度はなんなのだ。

せっかく休日だというのに早起きして可愛い姪っ子が遊びに来たのに、まったく目を合わせない。こんな挙動不審なジローさんはなかなか
見ない。これは何かを隠している。絶対に。


ジトーっと目を細めてジローさんを見ていると、目を瞑っていたイケオジは深くため息をついた。



「最初はな、荒木組を潰す予定だった」

「荒木って……」

「あぁ。汚ぇ商売に手つけてる汚ぇ組だ」


少しは聞いたことのある名前だ。

「今は他の仕事で組員が出払ってることもあってな。お前を投入しようと思ってたんだ」

投入て。そんな簡単な。

「デカくないヤマだし、お前なら綺麗に掃除してくるだろうと」

それは褒められてんのか。

ちなみにだが、私は組関係の情報にはそんなに強くない。組の仕事を生業としているわけではないからだ。

だけどたまに組の仕事を手伝っているのは、言ってしまえばアルバイトのようなものだ。絶対に裏切らず、戦闘力や知力もあり、すぐに動ける最適な駒。家族としての愛情もあるが、やはり組を治める長。いくら姪だとしても使えるものは使う、というのがジローさんだ。


「だが荒木の件は成瀬が先にやっただろう」

さっちゃんが口を挟む。

成瀬組。こちらも名前だけなら聞いたことがあるような気がする。確か、若頭がすごく優秀な組で、ウチとも引けを取らないとか……。


「あぁそうだ。だからな、律の仕事もなくなったはずだった」

「『はずだった』……って」

なんだか嫌な言い方な気がするのは私だけでしょうか。

「荒木の件はな、遅かれ早かれどこかが潰してだろう。だけどな、その有力候補はウチだってんだよ」

「なんで?」

「ウチのシマに手を出そうとしてたからな」

なんという自殺行為。バカなのか。いや、あくどい商売をしている時点でバカであることに変わりはないが、東堂に手を出そうとするなんて。
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