狂気のお姫様
本職相手でも、なかなかいい仕事をする私は、東堂で言うと密偵向きなのだ。なぜなら、うまく気配を消すことができるのと、身体が小さく目立たないから。

東堂でも指折りの私に気づく千秋ちゃんの実力は、相当なものだと言っていい。

さっきまで、親の仇かな?ってぐらい千秋ちゃんに殺気を撒き散らかしていたジローさんの表情が、少し和らぐ。

つまりは、あの物怖じしない飄々ととした態度といい、実力といい、ジローさん好みなのだ。

「律」

「はい」

ケーキは奢ってもらったけど、私悪くないし、そんな怒ることないじゃん、と思いながら再びジローさんの方に向く。

さっきとは違う、ただ姪を思いやるような叔父の表情。

「そりゃお前に仕事をさせるときもあるだろうよ。だがな、お前が高校を卒業しても、大人になっても東堂に入らせるつもりはない」

分かってるよ。前々から言ってたじゃんそんなこと。

だけど私に仕事を回すのは、もし私が東堂を継ぎたいと思ったときの保険だということも、全部分かっているのだ。

「決めるのはお前だから、お前の意思は尊重するが、俺は入って欲しくないと思ってる」

「うん」

「あんまり無茶して、心配をかけるな」

「うん」

私が仕事をする時は、徹底的に東堂の組員さんたちに守られているのだ。実際守ってくれているところを見たとか、そういう訳ではなくて、ただただ、私という人間を尊重し、隠し、そしてどういう仕事なのかを見させてくれている。

だから、私も独断で動いてはいけないのだ。罠なんてどこにでも張られているし、ジローさんが見えていないところで私が好き勝手すると、組も私自身も危険に晒されるから。

諭すような声色に、心が落ち着いていく。

だけど、

「でも私悪くないもん!!!!!!」

「そういうことじゃねぇって言ってんだろうが!!!」

「いった!!」

それとこれとは話が別だよ!と訴えるも、極悪非道のゲンコツをくらい、目の前に星がチカチカ光る。

この恨み晴らさずべからず!!!

あの憎たらしい巨人め!駆逐してやる!!
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