狂気のお姫様

「あーあ、そんなこと言ってたらもうケーキ奢んねぇぞ」

「は?女子高生と同じ席に座れただけで感謝するのはそっちだろ」

「絶大なブランドを盾にするな」

私からしたら25歳だか26歳もおじさんなんだよ。ぴちぴちの10代が一緒にお茶してあげただけでもお金をとってやりたいくらいだ。けっ。

「そう怒んなって」

風流な池の周りを歩きながらする会話ではないなと思いつつも、一応エスコートはしてくれている千秋ちゃんの手をにぎにぎ。

こんなやつでもやはり若頭なだけあって、手順というか道理というか、ちゃんと考えているところが逆に腹が立つ。

「で?動きは?」

「えー」

「なんだよ、その『えー』は」

「この手の話めんどくさいんだもん。こないだ学校の体育祭という名の暴れん坊大会があったけど、なんかちょっと怪しい人はいたよ」

「暴れん坊大会…………?」

そこはスルーしてくれ。

「黒髪ツーブロだった」

「黒髪ツーブロ……ねぇ」


心当たりがあるかないのか、千秋ちゃんは数秒考え込む。

人には聞いておいて、自分の考えてることは選別して言うところがまたいけ好かない。私も渡す情報は選んでるけどさ。

「知ってる人?」

「んー、どうだろうな。注意するに越したことはないんじゃねぇか?」

それとも、私がどこまで知っていい人間か、決めあぐねているか。

「ふぅん」

「まぁ、律。俺がお前に言いたいことは、誰も信じるなってことだ」

一般人に使う言葉の常套句だな。

「それは千秋ちゃんも入るよ」

「俺は未来の旦那なんだから信じてもらってもいいぞ?」

「気持ち悪い」

「お、おま、きもいより気持ち悪いの方が傷つくんだぞ」

やっぱり、真面目に話すモードが垣間見えるのは、私という人間の立ち位置が見えないから、か。

ていうか、未来の旦那発言は、怒り狂う奴らがいるからやめてくれ。

私が歩きやすい速さで歩く千秋ちゃんは、本職ということを除くと、そりゃ魅力溢れる大人なのかもしれないが…、

「まじで仕事の相手としか見れん」

これに限る。


「え、俺女子高生に振られてる?」

「うん」

あと顔があんまりタイプじゃないです、とは言わないでおこう。
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