狂気のお姫様
『なんで』と問われる意味が分からない。お前の存在が『なんで』だわ。至極どうでもいいので、足元に転がっている石を蹴り飛ばすが、そんなことお構いなしに目の前の男は口を開き続ける。
「俺、ここらへんでは名のあるチームで…」
知らん。まずお前を知らん時点でチームなんぞ知らん。
「だから絶対東堂さんのことは守るし」
いや絶対私のほうが強いから。
「あと、天の方たちとも話してみたくて…」
「…」
ほぉ、本音はそれか。
いや、私のことを好きで付き合いたいっていうのもまぁ本音なのだろうが、天に近づきたいという願望も強くあるらしい。「もし良かったら天の方たちと同盟を… 」なんて言ってる。
同盟も何も、彼らはチームではない。多分普通に仲良いメンバーで、何故か喧嘩が強くて、何故か圧倒的なオーラがあるから崇拝され恐怖の対象となっているだけだと思う。
ていうか陽ちゃんが暴走族だのチームだのに入ってたら、まずジローさんが怒り心頭、めっためたのバッキバキに殺されると思うのだ。想像するだけで可哀想なので、迂闊に同盟やら何やら言うのはやめてほしい。
「つまり天に近づきたいってことですよね。私を利用して」
「そんな!違うよ!1番は東堂さんであって…」
訳の分からない言い訳をはじめたが、お前の1番が私であろうがなかろうがどうでも良いし、利用しようとしているとことに変わりないではないか。もはや潔く認めた方が好感が持てるというものだ。
そろそろ飽きたな。
そもそもコイツと話すために私は中庭に来たのではない。あくまで散策だ。調査だ。そして小田が寝やがったからだ。
………もういいだろう。
「まぁ私は普通に無理なんで。ていうか天に近づきたいならご本人たちと話せばいいんじゃないんですかね。ほら」
実は気づいてた。
ていうか結構序盤からいた。普通にいた。隠れもせずにいた。
めちゃくちゃニヤニヤしてたのでちょっとイライラしていたのだ。
キョトンとしている男の背後をピッと指さすと、男の顔がみるみる青くなる。後ろに何がいるのか見当がついたのであろう。
ギギギ、と錆びたロボットのように、私が指さした方を向いた男は、
「ヒッ」
と短い悲鳴をあげると、動かなくなった。
「ほら、言いなよ」
私もまぁ性格が悪いので、ていうかもはや面白がっているので、ちゃっかり男の背中を押してあげるが、さっきまでの威勢はどこへやら、固まったまま動かない。
窓枠に頬杖をついている男が口を開く。
「何、お前」
「…っ」
たったその一言で、もう声が出なくなってしまったらしい目の前の男。
なんだよ。それで同盟を組みたいだのと戯言を吐いてたのか。しょうもない。