狂気のお姫様
奥に足を進めると、すぐに綺麗な顔がこちらを向いた。
「あ、陽ちゃーん」
ゾクッ
ほら、雰囲気やオーラは緩いのに、何故か今から殺されるような気分になる。
しかし、それは一瞬なのだ。
「えっ」
その証拠に、夕と愁を見るとすぐに『なんでこいつらいるんだ』という顔つきになった。
本当に一瞬に恐怖を感じる。それは2人も感じ取ったようだ。何故かは分からないし、こいつ自身気づいているかも分からない。
「…」
何か言いたげな顔で俺の顔を見つめる律。
「律ちゃんやっほー」
「どうも…」
夕はいつもの調子に戻ってて、こいつも切り替えはやいなと感心。
「警察呼べばいい?」
「ちょちょちょ、死んでませんよ」
「嘘だ、絶対1人ぐらい死んでるでしょこれ!」
「数打ちゃ当たるみたいな言い方しないでもらえます」
「あと、電話切った仕返し」
「いやー、あー、えー、あれはこいつらに携帯とられてぇ」
「はい嘘ー」
まだ夕と愁と出会って間もないからか、いつもの独特の緩さが引っ込むのが早い気がする。
「愁ちゃーん」
「なに」
夕に呼ばれて愁が奥に行ったと同時に、律がこちらへ小走りで来た。
両手は血で真っ赤に染まっており、顔や制服にもところどころ返り血が飛び散っている。馬乗りにでもなったのか、膝は黒くなっているようだ。
傍から見れば襲われた女の子に見えるかもしれない。本性なんて見た目では分からないからな。
「で?」
「ん?」
「可愛く言っても無駄だぞ」
「可愛いってとこは認めてくれてるのね」
「顔だけな」
「あれ、なんか腑に落ちない」
「いや、それはいいんだよ。なんだこの惨状は」
「いやいやぁ、自然の摂理?っていうか?陽ちゃんもノリノリだったじゃん?ね?」
「こんなに殺ると思わないだろうがバカ」
「普通普通」
「どこがだバカ!普通じゃねぇから俺が怒ってんだろ!」
「落ち着いて陽ちゃん」
「その言葉をさっきまでのテメェにそっくりそのまま返してやるよ」
「私はいつでも落ち着いてるもん」
「落ち着いてるやつがこんな殺人現場みたいな状況つくるわけないだろうが!」
「普通普通」
反省の色はいつものように皆無。
「お前は!いっつもいっつも!!!!」
【side 如月陽介 end】