年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
第9話 意識するってこういうこと?
 アルロイさんと並んで歩く。彼は私よりずっと背が高くて、歩幅が大きい。でも、私に合わせて歩いてくれている。小さな気遣いがとても嬉しかった。

「今日は、どこに行かれるのですか?」

 彼の顔を見上げると、彼は私を見つめた。双眸が優しく細められている。

「どうせですし、劇場に行こうかと思うんです。リスター領に新しい劇場ができたのはご存じですか?」
「え、はい」

 確かに新聞に載っていたから、知ってるけど……。

「ですが、あそこって今すごく人気じゃないですか? チケットを取るのも難しいって聞きました」

 元々人気の高い演目は即完売する劇団だ。今公演しているのもかなり人気が高い演目らしくて、立見席でさえとるのが難しいって使用人仲間から聞いている。

「そうですね。俺、あの劇団に知り合いがいて。せっかくだしとペアチケットを譲ってもらったんです」

 アルロイさんが差し出したチケットを受け取って、見てみる。

(本物! しかも二番目に高い席!)

 一番高いのはボックス席で、貴族が顧客層になっている。

 一般庶民は三番目のいわゆるB席、もしくは立見席をとるのだけど、これは一つ上のA席だった。

 庶民階級でもお金のある――いわば実業家たちが顧客になっている席だ。

「こ、こんな貴重なものを私に使っちゃっていいんですか……?」

 声が震えた。

 だって、私、ただの侍女なのに――。
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