年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「いいんですよ。それに、これはクレアさんを誘うために用意してもらったんですから」

 ……こんなこと言われて、断れるわけがない。

「その、お知り合いの方にお礼を伝えたいのですが」
「俺が伝えておきますね。あと、公演の感想なんかも教えてくれるととっても喜びますよ」
「それくらいだったら……」

 私にもできる。

「では、先にお昼を食べましょうか。公演は午後三時からなので、まだ時間があります」
「そうですね」

 アルロイさんが時計に視線を落とす。横顔が恐ろしいほどにかっこよかった。

(貴族の男性とは違うかっこよさよね)

 貴族の男性は線が細くて、儚げな印象を与えるいわば美しい系統の人が多い。もちろん、うちの旦那さまみたいな違うタイプもいるけど。

 比べ、アルロイさんはこう……なんていうか、仕事のできる男みたいな?

 実業家って言われても納得しちゃいそうなオーラがある。バリバリ仕事できますって雰囲気。

 私がぼうっと彼の顔を見つめていると、彼の腕が伸びてきて――私の肩を掴んだ。

「――おっと」

 彼が自身のほうに私の身体を引き寄せる。すぐ後に近くを走った乗合馬車。

「大丈夫ですか?」

 どうやら私が心ここにあらずだったから、助けてくれたみたいだ。

 ……情けない。とっても情けない。
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