年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
第10話 時間の隙間に
(た、タラシだ。この人天然タラシだ――!)

 咄嗟に思った。

 私は彼からプイっと顔を背ける。せめてもの抵抗だった。

「クレアさん」
「行きましょう。……早くしないと、時間がなくなっちゃいます!」

 そんなわけないのに。私は言い訳がましくこんなことを早口で言って、歩き始めた。

 アルロイさんはなにも言わずについてきてくれた。

(こんなの――心臓に悪すぎる)

 未だにバクバクと大きく音を鳴らす心臓。私は深呼吸をした。

 どうか、少しでも落ち着きますように。

 今の私にはこう願うことしかできないから。
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