年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
 街について、私たちは早速食事をすることにした。

 アルロイさんのおすすめのレストランはとてもおしゃれで、雰囲気も落ち着いていた。

 ランチもすごく美味しくて。焼き立てのパンとか、みずみずしいサラダとか。メインのお肉は口の中でとろけそう。

 リスター家で出してもらう使用人の食事も美味しくて好き。だけど、こっちも美味しくて好きだ。

「ごちそうさまでした。……奢っていただいて、すみません」

 自分の分は自分で出そうとしたのだけど、アルロイさんは私からお金を受け取ってくれなかった。

 いわく、今日付き合ってくれたお礼ということだ。

「いえ、いいんですよ」

 彼はにっこり笑った。有無を言わさぬ笑みだ。

 後からだったとしてもお金を受け取ってくれそうにはない。

「よかったら、また一緒に来ましょう」

 アルロイさんがさりげなく手を差し出す。足元には段差。……エスコートということだろう。

 私は控えめに彼の手に自分の手を重ねる。ぎゅっと握られて、心臓まで握られたみたいに苦しくなる。

「まだ開場まで時間があるんですけど、どこか行きたいところとかあります?」

 彼は腕時計を見ている。

「四十分くらいあるんで、街の中だったらどこでも……」
「どこでも、ですか」

 お茶でも――と思ったけど、今食べたばかり。お腹もいっぱいだし、これ以上食べたら上演中に眠くなりそう。

(あ、そうだ)

 少し考えると『とある場所』が思いついた。

「ここに来るまでにあった――」

 私の言葉にアルロイさんは一瞬驚いたけど、すぐにうなずいてくれた。
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