年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
 彼は廊下をずんずんと進んでいく。さらに、劇場の人たちとも顔見知りらしく、にこやかに挨拶をしていた。

(アルロイさんって、どういう人なの?)

 彼はただの庭師じゃないの……?

 私がいろいろと考えていると、目の前から華やかな女性が歩いてくる。

 背丈は高くて、プロポーション抜群。艶やかな赤髪が特徴的だった。

「あら、アルロイじゃない」

 彼女はにこにこと笑ってこちらに駆けてきた。

「あなたがここに来るなんて珍しいわね。どういう風の吹き回し?」
「別に大した意味はない」
「まぁ、相変わらずそっけない。――と、そちらの人は?」

 女性が私に気づいた。恐縮して頭を下げると、彼女は意味ありげに「ふぅん」と声をあげる。

 な、なんか嫌な感じ。

「あたし、ロレインっていうの。あなたは?」
「……クレアと言います」
「そう。ぜひとも楽しんでいってちょうだい」

 彼女は踵を返していく。

 歩き方一つとっても、とても美しい。

(あのドレス、背中が大きく空いているのね。すごい)

 私には着ることもできないドレスだ。

 ぼうっとロレインさんを見つめていると、強い力で手首をつかまれた。

「……クレアさん」
< 41 / 59 >

この作品をシェア

pagetop