年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
第16話 幸せには貪欲に
 仕える相手にこんな感情を抱くのは、不敬かもしれない。でも、奥さまには心からの気持ちを伝えたかった。

「ふふっ、そう。じゃあ、私のほうが適任なときは遠慮せずに頼ってね」
「はい」

 幾分心が軽くなった。笑ってうなずくと、奥さまも笑ってくださった。

「……それにしても、クレアはアネットさんのことをお母さんみたいだって思っているのね」
「私の中では、これが一番適切な言葉なんです」

 サイラスさんと一緒に育ててくれたほかの使用人たちをそう思えないわけではない。

 ただ、なんだろう。……お母さんがいたらこんな感じなのかなって、思わせてくれるのがアネットさんだった。

「私もマリンも、すごく幸運なんです」

 だって、サイラスさんに見つけてもらえなかったら、私もマリンもきっと死んでいた。

 サイラスさんがたまたま見つけてくれて、育てるって決意してくれたから、今の私たちがある。

 でも、最初からそう思えたわけじゃない。

 幼いころの私は、普通の家族に憧れていた。
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